kinact,max の 1/2 の不活性化速度をもたらす阻害剤濃度(KI)が 5.40 倍異なることを明らかにした 9)。しかし、ミダゾラムなどのテストステロンとは結合低頻度バリアント保有者における薬物相互作用リスクの予測精度を改善するためのin vitro & in silico 研究ことが示唆されている 7)。しかし、その代謝中間体が CYP3A4 のどの部位に結合し不活性化しているのかは不明である。これまでに我々は、エリスロマイシンによる CYP3A4 の MBI は、複数の基質、すなわちミダゾラムおよびテストステロン、ニフェジピンのいずれの代謝も同等のキネティクスでimpair することを報告している 8)。しかし、CYP3A4の各種遺伝的変異型においても、MBI の不活性化キネティクスが基質によらず同等であるかは明らかではない。 アミノ酸置換を伴う CYP の遺伝的変異は、競合阻害剤、MBI 阻害剤のいずれにおいても、その阻害キネティクスに影響を与える 1,9)。我々は代表的基質テストステロンを用いて CYP3A4 野生型と各種変異型分子(CYP3A4.2, .7, .16 and .18)に対するマクロライドの MBI キネティクスを in vitro において検討し、野生型と変異型の間でエリスロマイシンの最大不 活 性 化 速 度 定 数(kinact,max) が 最 大 1.84 倍、プロセスが異なる基質においても遺伝子型が MBIキネティクスに同じように影響するかは検討の余地がある。 本研究では、CYP3A4 に対する代表的な MBI 阻害剤であるエリスロマイシンおよびクラリスロマイシンの MBI キネティクスに対する遺伝子変異の影響が、結合部位が異なる基質を用いて評価した場合に異なって観測されるか否かを明らかにすることを目的とした。具体的には、CYP3A4 variants によるミダゾラム代謝に対するエリスロマイシンおよびクラリスロマイシンの MBI キネティクスを解析した。一方、我々は、これまでにミダゾラムと同様に典型的な CYP3A4 基質であるテストステロンを用いて、エリスロマイシンとクラリスロマイシンの阻害活性が CYP3A4 変異型間で異なることを報告している。そこで、今回得られた結果をこの既存の結果と比較することで、CYP3A4 遺伝的変異型分子における MBI キネティクスに対する基質間の違い臨床上の DDI リスクを評価し、メジャーバリアントと比較した報告はなく、実際に in vitro DDI 試験から得られた Ki 値の差異が臨床上の DDI の程度に与える影響は明らかになっていない。 代表的な薬物代謝酵素である CYP3A4 には、アミノ酸変異を伴う遺伝子多型が同定されている。この遺伝子変異がもたらす代謝活性への影響は、基質間で異なることが報告されている。例えば、CYP3A4.18(Leu293Phe)では、ミダゾラムの代謝活性は低下するが 2)、テストステロンの代謝活性は亢進する 3)と報告されている。この原因として、基質間で CYP3A4 活性中心との相互作用のプロセスが異なることがあげられる。これまでに CYP3A4 の活性中心には、3 つの結合部位が存在することが提唱されている 4)。Galetin ら 4)や Wang ら 5)は、それぞれの結合サイトは、基質ごとに、区別された、また優先的に結合するドメインが存在することを示唆している。また、複数の研究グループは、ミダゾラムの 2 つの代謝経路、つまり 1-水酸化と4-水酸化について、それぞれ独立した基質結合部位が存在する可能性を示唆している。また、Hackett による simulation によると、CYP3A4 の活性中心において最も重要な役割を担うとされるSer119 と基質との hydrogen bond はミダゾラムにおいて確認されるもののテストステロンでは確認されず、両基質の活性中心でヘムとの相互作用様式は異なる 6)。よって、上記の CYP3A4.18 における基質間での活性変動の違いも、このようなミダゾラムとテストステロンの異なる代謝プロセスによる影響の違いによって説明できるかもしれない。 エリスロマイシンは、CYP3A4 に対して強力なエリスロマイシンの時間依存的 CYP3A4 阻害のメカニズムは、mechanism based-inhibition(MBI)として知られており、その不活性化に寄与する代謝中間体の不可逆的な結合により CYP3A4 は、それ自身が分解を受けるまでこの相互作用は遷延する。これまでに、結晶構造解析により、エリスロマイシンtime-dependent inhibition(TDI)活性を有する。は CYP3A4 の複数の基質結合部位と相互作用する143
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