臨床薬理の進歩 No.45
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結  果患者由来腫瘍移植マウスモデルを用いた婦人科希少がんである中腎様癌の個別化医療開発プレート上のマトリゲルドームにまき、3 次元培養用の培地に浸し培養した。72 時間ほどコントロールまたは薬剤(パクリタキセル、カルボプラチン、トラメチニブ、オミパリシブ)投与下で培養した後、3 次元培養細胞の ATP レベルを Cell-Titer Glo® Viability assay で計測し抗腫瘍効果を評価した。In vivo PDX マウス実験 前述のように継代した PDX マウスを作製し、週1 回の腹部超音波検査で腫瘍体積が 100 mm3 に達した時点で、マウスをコントロール群(n=5)、カルボプラチン群(n=3、25 mg/kg を週 1 回腹腔内投与)、トラメチニブ(0.25 mg/kg を週 3 回腹腔内投与)とオミパリシブ(2 mg/kg を週 2 回腹腔内投与)の併用群(n=5)の 3 群に無作為に割り付けた。薬剤投与量は、既報のマウス実験を参考にして忍容性が高い投与量を設定した。PDX 腫瘍体積、マウス体重、全身状態を毎週評価した。統計解析 GraphPad Prism 7 を用いて one-way ANOVAまたは Dunnett multiple comparison test にて行った。p< 0.05 を統計的に有意と定義した。 患者由来 MLA 腫瘍を用いて同所移植を行い、PDX マウスモデルを作製した(図 1A-C)。PDX腫瘍は患者 MLA 腫瘍と組織像が類似しており、共通して GATA3 発現陽性、ER 発現陰性、CD10発現陽性を示した(図 1D)。 患者由来 MLA 腫瘍の DNA を WES にて解析したところ、11 個の「病原性の可能性が高い」または「病原性あり」であるバリアントを同定した。そのうち既に多くのがん種で関連を報告されているものは KRAS(exon2:c.G35T:p.G12V、Allele Frequency 0.714)と PIK3CA(exon2:c.G263A:p.R88Q、Allele Frequency 0.42)の 2 つであった。 PDE モデル(図 2A)において、婦人科がん標準(GATA3、ER、CD10、Ki-67)を用いた免疫組織全 エ ク ソ ー ム シ ー ク エ ン ス(Whole Exome sequencing、WES)は Annovar を用いて行った。フィルタリングとしてInterVar または ClinVar により「病原性の可能性が薬 剤 曝 露 下 に 72 時 間 培 養 後、 摘 出 片 を 採 取、3 次元オルガノイド培養クを 5 μm の切片に切り出し、HE 染色または抗体化学を実施した。 DNeasy Blood & Tissue Kit(Qiagen)を用いて、凍結された患者 MLA 腫瘍からゲノム DNA を抽出した。WES およびデータ解析は大阪大学微生物病研究所ゲノム情報研究センター内のバイオインフォマティクスセンターゲノム解析室にて行われた。一塩基多型は Mutect2 を用いて、アノテーション非翻訳領域を除去したのち、ToMMo データベース、1000 Genomes Project、gnomAD、esp6500、HGVDで報告されているマイナーアレル頻度(MAF)が0.005 未満の同義バリアントを除去した。その後高い」または「病原性あり」と示されたバリアントを選択した。Patient-Derived Explant(PDE) 既報 6,7)を参考にして PDE モデルで実験を行った。PDX 腫瘍を 3 mm3 に薄切し、24 ウェルプレートで培地(10% FBS、0.01 mg/mL ヒドロコルチゾン)に浸したゼラチンスポンジ上で薬剤またはコントロールを添加し培養した。薬剤はパクリタキセル、カルボプラチン、トラメチニブ(MEK 阻害剤)、オミパリシブ(PI3K/mTOR 阻害剤)を用いた。FFPE ブロックを作製し、抗 Ki-67 抗体を用いた免疫組織化学で抗腫瘍効果を評価した。 PDX 腫瘍を細切後、0.56 U/mL Liberase DH にて37 ℃の水浴中で 1 時間振盪し酵素処理を行った。その後 40 μm のフィルターで細胞を濾過した後、マウス由来細胞を Mouse Cell Depletion Kit で除去した。PDX 腫瘍由来のヒト細胞 2500 個を 96 ウェル111111

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