臨床薬理の進歩 No.45
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対象と方法(TruSight Oncology500;TSO500、イルミナ社)にて解析を行った 5)。TSO500 での解析データについて同遺伝子パネルでの解析ソフトを用いて変異の heat map の作成、TMB の算出を行った。Oncogenic mutation count(OMC) TSO500 パ ネ ル で 検 出 さ れ た 変 異 に つ い て、variant allele frequenct 5% 以上の変異についてOncoKB にてアノテーションを行い、oncogenicもしくは likely oncogenic と評価された変異の数をOMC として症例毎に算出した。PD-1 阻害剤の効果検討 PD-1 阻害剤(Pembrolizumab)の投与された年月から、画像上で腫瘍進行が認められるもしくは腫瘍の進行により投与が不可能になったと判断された年 月 ま で を 無 増 悪 生 存 期 間(Progression free survival:PFS)として算出し、PD-1 阻害剤の効果の指標とした。同薬剤の副作用などで投与が不可能になった症例については、無効と判断せずに、腫瘍の進行が認められるまでを PFS として評価することとした。TSO500 で検出された変異と PD-1 阻害剤との相関について PD-1 阻害剤の効果(PFS)と TSO500 で検出された変異との相関について、同遺伝子パネル付属の解析ソフトを用いて、無作為的に有意な相関を示す変異の検索を行った。同ソフトでは変異とcopy number alteration(増幅もしくは欠失)も複合的に検索できるアルゴリズムとなっている。統計解析 EZR 6)を用いて PFS の算出、Kaplan-Meier 曲線の作成、PD-L1 TPS と OMC との相関解析、PFSとの各変数の単変量解析、多変量解析、COX 比例回帰モデル解析を行った。94毒性軽減の点から明らかにする必要がある。こうした課題に対して、癌ゲノム情報や免疫細胞の状態を含む癌微小環境などの研究が進められているが、まだ確立されていない。今後、癌ゲノム医療が浸透していく中で、ゲノム情報に基づく癌患者の層別化が進んでいくことが予想される。PD-L1 TPS は癌細胞と周囲のリンパ球との相互作用を反映する癌微小環境を反映するマーカーであるが、癌ゲノム情報は新たなバイオマーカーとなる期待される。 これまでの報告では、単一の遺伝子変異としてKRAS 変 異 が 治 療 奏 効 因 子 で あ り、STK11(LKB1)、KEAP1 変異が治療抵抗性因子であるという報告があった一方で、KRAS 変異は治療効果と関係しないという続報も出されている 3)。また遺伝子変異の総数を反映するとされる Tumor mutation burden(TMB)と治療効果の相関についても、その測定法が統一されていないため一定の見解はいまだ得られていない 4)。日本人における PD-1 阻害剤の効果に対する癌ゲノム情報の解析についての報告は見られないため、本研究は重要なものであると考える。対象症例 実地臨床で PD-1 阻害剤が導入された 2017 年 3 月~ 2019 年 12 月までで大阪国際がんセンターにて一次治療として PD-1 阻害剤(Pembrolizumab)が導入された症例のうち、本研究の同意取得が得られた症例を対象とした。対象症例の性別、年齢、喫煙歴(Current/ Former/ Never)、Pembrolizumab 投与時の Performance Status(ECOG)(PS)、組織型、病期(TNM 臨床病期分類(UICC-8 版))、PD-L1 TPS(%)を後ろ向きに集積した。 本研究計画は 2020 年 6 月に大阪国際がんセンター倫理員会にて承認を受けている(承認番号『20085』)。保存検体を用いた遺伝子解析 治療前の保存組織を用いてがん遺伝子パネル

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