* 1 KUNIMASA KEI * 2 NISHINO KAZUMI * 3 KUKITA YOJI 國政 啓*1 西野 和美*2 久木田 洋児*3はじめに要 旨目的 Programmed cell death-1(PD-1)阻害剤の治療効果予測のゲノムバイオマーカーの探索研究を行った。方法 一次治療で Pembrolizumab 単剤が導入された進行期肺癌患者で、保存組織検体を TruSight Oncology50にて解析し、検出された変異、Tumor mutation burden(TMB)、Oncogenic mutation count(OMC)、Programmed cell death-1 ligand tumor proportion score(PD-L1 TPS)と PD-1 阻害剤の効果(無増悪生存期間:Progression free suvival(PFS))との相関を検討した。結果 解析対象症例は 61 例。PFS の中央値は 9.0[4.8-38.0]ヶ月で、TP53 と ERBB2 の増幅の共変異、NFE2L2変異を有する症例では有意に PFS が短縮し、PD-L1 TPS ≧ 80%、OMC ≧ 3 が PFS とそれぞれ有意な相関を認めた。PD-L1 TPS と OMC に相関はなかった。結論 PD-L1 TPS と OMC の組み合わせが PD-1 阻害剤の効果予測マーカーとなる。療法による PD-1/PD-L1 阻害剤の使用が推奨されている。同薬剤の効果の予測因子としては腫瘍細胞表面の PD-L1(Programmed cell death 1- ligand 1)発現が臨床導入されており、実際に PD-L1 の陽性細胞数(Tumor proportion score:TPS[%])により、そ の 治 療 方 針 が 層 別 化 さ れ て い る 1)。PD-L1 TPS ≧ 50% の高発現群では単剤治療もしくは複合免疫療法が推奨され、PD-L1 TPS <50% の中等~低発現群では複合免疫療法が推奨されている 2)。 しかし、PD-L1 TPS は十分な効果予測マーカーではなく、PD-L1 高発現群にもかかわらず、PD-1阻害剤が無効な症例が約 50%存在している。また、単剤療法と複合免疫療法の比較において、どのような患者に殺細胞性抗がん剤の併用が必要なのかも、2019 年度版の肺癌診療ガイドラインでは、ほぼ全て 肺癌治療を含む固形癌の抗がん剤治療において、近年極めて大きな進歩が 2 つあった。1 つ目はPD-1(Programmed cell death-1)阻害剤を中心とする免疫チェックポイント阻害剤の導入、2 つ目は次世代シーケンサーの技術開発によるがん遺伝子パネルの臨床導入による癌ゲノム医療の実装である。進行期非小細胞肺癌における抗 PD-1 阻害剤の導入については、2017 年の PD-1 阻害剤単剤療法の臨床導入にはじまり、近年は従来の殺細胞性抗がん剤との併用療法(複合免疫療法)へ進み、の症例で、一次治療から単剤治療もしくは複合免疫Key words:肺癌、PD-1 阻害剤、遺伝子パネル、oncogenic mutation、ゲノムバイオマーカー大阪国際がんセンター 呼吸器内科 同 上大阪国際がんセンター ゲノム病理ユニット肺癌における Pembrolizumab の治療効果予測の網羅的ゲノムバイオマーカー探索研究Comprehensive genomic biomarker screening study for Pembro lizumab in lung cancer patients93
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