臨床薬理の進歩 No.43
88/238

謝  辞利益相反今後は、K02288 と既存薬との併用による相乗的な敗血症治療効果がみられるかについて検証していく。また、今回の検討では、K02288 を事前投与するスケジュールでその予防効果を検証したが、今後は治療効果も検証していく。以上、本研究により、Robo4 の発現を促進し、血管透過性を抑制する新しい戦略で、重症感染症・敗血症を治療する可能性を示すことができた。 本試験の遂行にあたり、研究助成を賜りました公益財団法人臨床薬理研究振興財団に深く感謝致します。また、CDH5-Cre/ERT2 マウスをご供与頂きました慶応義塾大学 久保田義顕先生に深く感謝いたします。 本研究に関して、開示すべき利益相反はありません。74効果がみられなかった。この原因として、肺と腎臓における BMP9-ALK1 シグナルの寄与度の違いが考えられる。これまでにマウスのトランスクリプトーム解析により、ALK1 の発現量が肺で特異的かつ顕著に高く、腎臓を含む他臓器では少ないことが示されている 10)。このことから、マウスの肺においては腎臓よりも ALK1 による Robo4 発現抑制が強く働いており、K02288 による Robo4 発現促進や血管透過性の抑制が、肺で強くみられたことが予想された。K02288 が、Robo4 過剰発現マウスと同等に LPS 投与マウスの死亡率を抑制したことから、肺血管の透過性抑制が LPS 投与マウスの死亡率低減に大きく寄与した可能性が考えられる。今後、他の臓器における ALK1 の発現量を詳細に解析し、K02288 の肺以外の臓器への作用についても評価する必要がある。 K02288 の効果が肺に限定的であることはメリットとも考えられる。ALK1 の発現は血管内皮細胞に特異的であることから 11)、ALK1 阻害剤は肺の血管内皮細胞に特異的に作用し、透過性を抑制する、特異性の高い医薬品候補分子である可能性がある。

元のページ  ../index.html#88

このブックを見る