臨床薬理の進歩 No.43
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方  法ウイルス、lipopolysaccharide(LPS)投与モデル)の死亡率を抑制する7,8)。これらの知見を踏まえ、著者らはRobo4発現を促進し、血管透過性を抑制する新しい戦略で、重症感染症・敗血症を治療できるのではないかと考えた。今回の研究では内皮細胞におけるRobo4の発現促進により敗血症病態を緩和できるかを評価するとともに、Robo4発現促進分子の探索とその敗血症治療効果を解析した。Robo4過剰発現マウスの作製 CAGプロモーター、stopコドン、loxP配列、マウスRobo4のcDNAを含むDNA配列を、C57BL/6マウスの受精卵に導入後、偽妊娠マウスに移植した。導入配列を持つマウスを選択し、CDH5-Cre/ERT2マウスと交配させ、血管内皮細胞特異的にRobo4を過剰発現するマウス(Robo4iECマウス)を樹立した。本研究の動物実験は、大阪大学薬学研究科の動物実験委員会での審査と承認を受け実施した。マウスにおけるRobo4発現の確認 Robo4iECマウス(5-7週齢)にタモキシフェンを4日間、腹腔内投与(1 mg/day)し、14日後にマウスから臓器を摘出し、RNAを精製後、リアルタイムRT-PCRによりRobo4 mRNA量を解析した。また、bone morphologenic protein 9(BMP9)受容体 activin receptor-like kinase(ALK1)の阻害剤(K02288)をC57BL/6Nマウス(7-8週齢)に尾静脈内投与(0.5 mg/kg)し、24時間後に肺と腎臓を摘出し、Robo4 mRNA量を同様の手法で解析した。敗血症モデルの解析 タモキシフェンを投与し14日間飼育したRobo4iECマウスの腹腔にLPSを投与(25 mg/kg)し、生存時間を測定した。また、K02288を投与し24時間飼育したC57BL/6Nマウスの腹腔にLPSを投与(16.5 mg/kg)し、生存時間の測定と血管透過性の解析を行った。透過性の解析は、エバンスブルーを尾静脈内に投与し、1時間後に灌流と臓器の摘出を行った。臓器中のエバンスブルーを抽出し、620 nmの吸光度測定により定量した。リアルタイムRT-PCR 臓器と細胞から得られたtotal RNAからcDNAを作製し、遺伝子特異的プライマーとSYBR Green PCR Kitを用いてリアルタイムRT-PCRを行った。標的配列を含むプラスミドを用いて得られた検量線からコピー数を算出し、GAPDHのコピー数で補正した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いた解析 低血清培地(0.5% FBS含有EBM-2)で16時間培養したHUVECを、K02288(1µM)で30分処理した。BMP9(1ng/mL)を添加し6時間後に、RNAを調製した。siRNAを用いた実験では、HUVECにSMAD1とSMAD5に対するsiRNAもしくはコントロールsiRNAを導入後、低血清培地で16時間培養した。BMP9で処理後、6時間後にRNAを調製し、リアルタイムRT-PCRに用いた。マトリゲルを用いた解析では、HUVECをマトリゲルコーティングされたプレートに播種し、24時間後にK02288を各濃度で処理した。24時間培養後に、Cell Recovery Solutionを用いてゲルから細胞を回収し、RNAを精製した。得られたRNAを用いて、リアルタイムRT-PCRで解析した。統計手法 2群間の比較には、Student’s t検定を用いた。多群間の比較には、Tukey検定またはDunnett検定を用いた。生存曲線の比較にはlog-rank検定を用いた。両側検定におけるp値が5%未満の際に統計学的に有意差ありと判定した。70

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