結 論謝 辞チモロール外用剤とプラセボを比較した無作為化対照試験は 1 件しか報告されていない 1,13)。現在、乳児血管腫に使用可能な局所的なβ遮断薬はない。本研究でクリーム剤を選択したのは、プロプラノロール塩酸塩の軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤の豚皮膚への影響を比較した先行研究で、クリーム剤は皮膚表面への薬効の保持率が高く、末梢血管への浸透性は低いことが示されていたからである 14)。外用のβ遮断薬は、安全性と有効性が確認されれば、肝臓の初回通過効果を受けないため、局所的な効果が期待できる 1,15)。 本研究にはいくつかの限界があった。第一に、規模が小さいため対照群を設定することができず、体のすべての部位に乳児血管腫がある患者を含めることができなかった。第二に、本研究は日本人患者のみを対象として行われた。第三に、観察期間が短い(最大 24 週間)ことが考えられた。 今回われわれは、日本人乳児血管腫患者を対象とした 5%プロプラノロールクリームの非盲検単群試験を実施した。その結果、クリーム剤の有効性が示された。また、クリーム剤の安全性は優れており、薬剤関連有害事象は認められなかった。プロプラノロールの局所投与は、全身的な治療を必要としない、美容上問題のある部位の表面的な乳児血管腫に対する第一選択の治療法と考えられる。多人種の乳児血管腫患者を対象としたプロプラノロール外用剤の大規模プラセボ対照試験が望まれる。 本研究に参加してくださった方々、実施医療機関の医師、薬剤師、臨床研究コーディネーターの皆様に心から感謝いたします。本研究に関して特にご支援をいただいた木山由実さん、牧野公美子さん(浜松医科大学)に深謝いたします。本研38臨床試験と同様であった 6,7)。今回の臨床試験では、5% プロプラノロールクリームの 24 週間投与後の乳児血管腫に対する有効率は 68.8% であり、第Ⅱ /Ⅲ相臨床試験におけるプラセボ群の有効率よりも高かった 7)。安全性については、プロプラノロールによく見られる重篤な有害事象は、本試験では認められなかった。 有効性については、24 週目の有効率と、表面積、長径、および色の濃さの減少によって示された。推定値として、報告されている臨床試験での経口剤のプラセボ値である 12%を用いた 7)。また、12 週目の有効率は 31.3%と低く、本剤が効果を発揮するにはある程度の時間が必要であることが示唆された。さらに、表面積、最大径、色の濃さは経時的に減少する傾向を示した。色差の算出に用いた CIE2000色差式は、視診との相関性が高いことが特徴であり、乳児血管腫の治療の有効性評価に用いられている 6,7)。 クリームは、経口剤とは異なり、低血圧、徐脈、低血糖などの重篤な副作用がなく、安全性が高いことが示された。日本人を対象とした経口剤の臨床試験において、プロプラノロール 3 mg/kg/day を1 日 2 回、168 時間反復経口投与後の血漿中トラフ濃度の中央値のシミュレーション結果では、6、9、12 時間後にそれぞれ 16.7、20.8、26.4 ng/mL であった 12)。本試験では、4 週目と 24 週目に血漿中濃度を測定したが、いずれの最高値もシミュレーションのトラフ濃度より非常に低く、本剤は全身的な作用はほとんどなく、局所的な効果を示すことが示唆された。一般に、薬物の血漿中濃度が高いほど、副作用の発生率は高くなる。したがって、今回の試験では、プロプラノロールの血漿中濃度が低かったため、経口投与に比べて副作用の発生率が低かったと考えられる。これらの結果は、プロプラノロールクリーム外用剤の安全性を裏付けるものである。 チモロール外用剤またはプロプラノロール外用剤の有効性と安全性については、いくつかの非対照症例報告やケースシリーズで述べられているが、
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