方 法被験者 本研究では、長径 1.5 cm 以上の表在型の乳児血管腫と診断された生後 35 ~ 150 日齢の乳児を対象とした。被験者は、静岡県の浜松医療センター小児科および中遠総合医療センター小児科から募集した。以下の条件に当てはまる患者は除外した。1 . 生 活 や 機 能 に 影 響 を 及 ぼ す 乳 児 血 管 腫 、2. Kasabach-Merritt 症候群、3. 乳児血管腫に対する治療を受けている、4. コントロール不良の心不全、5. 気管支喘息または気管支痙攣の既往歴、6. 低血糖(血糖値 40 mg/dL 未満)、7. 低血圧(収縮期血圧 50 mmHg 未満、拡張期血圧 30 mmHg未満)、8. 徐脈(脈拍 80 拍 / 分未満)試験デザインおよび治療法 本試験は、多施設共同、非盲検、単群試験として2019 年 6 月から 2020 年 12 月まで実施された。乳児血管腫の被験者に、5%プロプラノロールクリームを 1 日 2 回、24 週間投与した。試験薬は以下のように調製した。プロプラノロール塩酸塩粉末(東京化成工業、東京)、ポリエチレングリコール400(PEG400、富士フイルム和光純薬、日本、大阪)、および精製水を混合し、さらに 50 ℃の温水浴中に15 分間置いた。この水溶液に親水性クリームを加え、自転式ミキサーで 100 × g、1 分間攪拌した。保護者は、1 日 2 回、指先で乳児血管腫の表面を覆う程度にクリームを塗布し、優しく擦り込むように指導した。スクリーニング時、ベースライン時、4週目、8 週目、12 週目、16 週目、20 週目、24 週目の計 8 回、研究対象者の乳児血管腫の状態を観察した。有効性および安全性の評価 有効性は、訓練を受けた独立した 2 名の評価者により、標準化された写真を用いて、定められた手順で評価された。評価者はすべての写真を評価し、受診日と研究対象者番号は伏せられた。対象となる乳児血管腫の写真は、治療開始 1 日目と 12 週目、24 週目に、担当の研究責任医師が標準的な手順に34とした二重盲検比較試験では、有効性解析対象症例 276 例のうち血管腫が治癒またはほぼ治癒した割 合 は、3 mg/kg/日 を 24 週 間 投 与 し た 群 で は60%(61/101 例)である 7)。今日、プロプラノロールの経口剤は世界中で承認されており、機能障害や重篤な状態に陥る可能性のある患者の乳児血管腫に対する第一選択の治療法となっている 1,2)。しかし、低血圧、徐脈、睡眠障害、低血糖、高カリウム血症、喘息様の呼吸器症状など、いくつかの副作用が報告されている 1,2)。これらの副作用は、プロプラノロールが経口剤のため全身に作用して生じるものである 1)。 乳児血管腫に対するプロプラノロールの外用剤については、いくつかの報告がある 8)。しかし、現在までに、プロプラノロールの外用剤に関する臨床試験は、標準化された手順で行われていない。これまでの研究では、乳児血管腫が退行した患者のみを対象としていたり、退行した期間を対象とするために治療期間が長くなっていたり、標準化された手順ではなく複雑または主観的な評価方法を用いた臨床試験であった 8)。 そこで今回われわれは、日本人の乳児血管腫を対象とした、5% プロプラノロールクリームの有効性と安全性を評価することを目的とした臨床試験を実施した。倫理 本研究の計画書は、特定臨床研究として浜松医科大学の臨床研究審査委員会に承認された。本研究は、ヘルシンキ宣言、臨床研究法、およびその他の関連する法規に従って実施された。研究に先立ち、すべての被験者の法的保護者から書面によるインフォームド・コンセントを得た。本研究は、臨床研究実施計画・研究概要公開システム(jRCTs 041190041)に登録された。
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