臨床薬理の進歩 No.43
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*1 NAGATA EIKO *2 KASHIWAGURA YASUHARU 静岡県立大学薬学部実践薬学分野*3 UCHIDA SHINYA An open-label single-arm clinical trial永田 絵子*1  柏倉 康治*2 内田 信也*3はじめに要   旨 乳児血管腫は、乳児に最もよく見られる良性腫瘍であり、乳児の4~5%に発生する。早産児、女児に多く認められることが多い。乳児血管腫の腫瘍は、生後1週間以内に発生し、その後、生後3~6ヵ月の間に急速に成長し、4歳までに乳児血管腫の90%は自然に退縮する1,2)。したがって、ほとんどの乳児血管腫は医療現場においては経過観察としてフォローアップされる1,2)。 ほとんどの乳児血管腫は頭頸部周辺に発生するため3)、子どもの外見や心理に深刻な影響を与えることがあると報告されている4)。生命的、機能的、美容的問題が軽度の場合であっても、ほとんどの目的 乳児血管腫の患者におけるプロプラノロールの外用剤の有効性および安全性を評価することを目的とした。方法 デザインは多施設共同非盲検非対照試験とした。2019年6月から2020年12月に実施し、増殖性乳児血管 腫を有する35~150日齢の日本人乳児8名が参加した。被験者にはプロプラノロールクリームを1日2回投与した。24週目と12週目にそれぞれ中央評価に基づく有効率を、ベースライン値と比較して検討した。結果および考察 24週目の有効率は68.8%(95%信頼区間:44.1~85.9%)であった。対象となる乳児血管腫の表面積、最大径、色の濃さは、時間の経過とともに減少した。有害事象率は87.5%、薬剤関連有害事象率は0%で あった。プロプラノロールクリームは、日本人の乳児血管腫の患者において有効かつ安全性が高く、美容上問題のある部位の表面的な乳児血管腫に対する第一選択の治療法と考えられる。浜松医科大学小児科学教室     同   上乳児血管腫が体表に形成されるため、保護者は美容面の問題により乳児血管腫の治療を希望することが多い4)。2008年、乳児血管腫を合併した肥大型閉塞性心筋症のフランス人患者に、非選択性β遮断薬であるプロプラノロールが投与され、血管腫が改善された5)。このことがきっかけとなり、乳児血管腫に対するプロプラノロールの経口剤が認知されるようになった5)。国内臨床試験における増殖期の乳児血管腫患者(生後35日~150日)を対象とした非盲検非対照試験では、有効性解析対象症例32例のうち3 mg/kg/日の24週間投与後に血管腫が治癒またはほぼ治癒した割合は78%(25/32例)である6)。 海外臨床試験における増殖期の乳児血管腫患者(生後35日~150日)を対象Key words:乳児血管腫、プロプラノロール、外用剤、乳児、臨床試験33乳児血管腫を対象としたプロプラノロールクリームの有効性および安全性の検討-多施設共同非盲検非対照試験-Efficacy and safety of propranolol cream in infantile hemangioma:

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