臨床薬理の進歩 No.43
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謝  辞利益相反的接続関連より、脳機能的接続も小さい可能性がある。したがって、適切な抗うつ薬治療(増量等)により脳機能的接続を高めることで、症状改善につながる可能性が示唆される。 本研究には限界点がある。本研究が横断研究であるため、抗うつ薬投与量と脳機能的接続との間の相関関係について、因果関係を示すことができなかった点である。本来であれば縦断研究を施行する予定であったが、新型コロナウイルス感染症流行により、十分な症例数の新規の縦断データを取得して因果関係を解析することが不可能となった。今後、疾患横断的な縦断研究により、薬剤が症状改善に影響を与える脳機能基盤を解明する必要があると考えられる。 本研究では、大うつ病性障害群における抗うつ薬投与量と脳機能的接続との関連を調査し、大うつ病性障害群において、抗うつ薬投与量と広範囲の脳機能的接続との正の相関を見出した。またこの結果は、対象を非寛解群に限定しても認められた。本研究結果は、抗うつ薬の治療効果の脳機能基盤を示唆するものであり、今後は、縦断的な臨床データおよびMRIデータを大規模に収集し解析することにより、抗うつ薬の効果予測・測定の技術発展が期待される。 本研究を施行するにあたり、助成いただいた臨床薬理研究振興財団に深く感謝を申し上げます。また、本研究の推進に関し指導・助言いただいた、東京大学医学部附属病院精神神経科の笠井清登教授に深く感謝を申し上げます。 本研究に関し、開示すべき利益相反はありません。31

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