臨床薬理の進歩 No.43
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53035202)euavp(01go-)euavp(01go-51015000ll43210ll........02404 PPM1Dの遺伝子増幅ならびに過剰発現が、神経芽腫、乳がん、急性骨髄性白血病7)等の多くのがん細胞において検出されることから、以前よりPPM1Dはtumorigenesisと強い相関があると考えられてきた。しかし、ALLの病態や治療反応性におけるPPM1Dの役割についての報告はほとんどない。 今回我々は、上述のようなALL細胞株を用いたスクリーニングで見出したPPM1Dという分子が、再発ALLにおいてどのような役割を果たすのか検証することにした。最初に、再発ALL患者の初発時および再発時検体の発現変動遺伝子を比較したところ、統計学的には有意ではなかったが、PPM1D遺伝子の発現が初発時検体に較べて再発時検体で高値を示す傾向を認めた(図2)。次に、ALL細胞に対するPPM1D阻害剤と各種化学療法剤の併用治療における治療効果を分子学的に評価するために、B細胞性ALL細胞株(RCH細胞)をMAF単独、GSK2830371(PPM1D阻害剤)単独、またはMAF+GSK2830371の3通りの方法で処理し、ウェスタンブロッティングでDNA損傷効果を示すγH2AXの発現を評価したところ、PPM1D阻害剤併用下では、MAFによるDNA損傷効果が増強lower in relapse-4-2log2Fold Change結  果B-ALLhigher in relapsePPM1Dlower in relapse-4-22log2Fold Change考  察T-ALLhigher in relapsePPM1D図2 再発ALL患者の初発時検体と再発時検体を用いたDESeq2を用いた2群間比較から得たVolcano plot左図がB細胞性ALL、右図がT細胞性ALLの結果。X軸は Fold changeで、右に行くほど再発時検体で発現量が大きいことになる。 Y軸はp値で、上に行くほどp値が低いことになる。されることが判明した(図3)。さらに、B細胞性ALL細胞株(RCH細胞)に対するPPM1D阻害剤併用下のDNA損傷効果の増強は、VCRにおいても確認することができた(図4)。 上述のような、ALL細胞に対するPPM1D阻害剤による各種化学療法剤のDNA損傷効果の増強が、殺細胞効果に繋がるかどうかを検証するために、2種類のB細胞性ALL細胞株(REH、RCH細胞)を用いてin vitro細胞生存アッセイを行った。両方の細胞株の実験において、PPM1D阻害剤がMAF、VCR、6-MP、DNR、AraCの殺細胞効果を増強することを確認することができた(図5)。 最後に、PPM1D阻害剤による各種化学療法剤の殺細胞効果増強を臨床検体で確認するために、PDXsのALL細胞を用いてex vivo細胞生存アッセイを行った。3種類のPDXs(B細胞性ALL 1種、T細胞性ALL 2種)の実験において、PPM1D阻害剤が6-MP、AraC、VCR、DNR、MAFの殺細胞効果を増強することを確認することができた(図6)。 PPM1DはWip1(wild-type p53 induced phosphatase 1)とも呼ばれ、p53依存的に誘導20

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