臨床薬理の進歩 No.43
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RBHでのACHD研修写真3 同時期に研修に来ていた友人ためか、Consultantの半分以上は女性医師で構成されており、子育てをしながら働いている女性医師が多いのも印象的でした。 RBHはConsultant病院で、2019年には21万人の外来患者さんの受診があったそうですが、ほとんどは半年〜1年に1回の定期受診の患者さんです。そのほかに年間4万人の入院患者さんの診療も行っています。 患者さんだけでなく、RBHには世界各国から人材が集まってきており、私が所属していたACHD centreも各国医師から成る混成チームでした。私の直属の上司であるMichael Gatzoulis主任教授はギリシャ人、Consultantたちはポーランド人、インド人、ポルトガル人、中国人、ロシア人など本当に多国籍で、当初はそれぞれの訛りのある英語を聞き分けるのに必死でした。私が在籍していた間にも、世界各国の医師が入れ替わり立ち代わり勉強に訪れ、数日間だけ見学に来る医学生もいたりして、教授外来はいつも見学者で一杯でした。同時期に研修に来ていたイタリア人の循環器内科医2人、ブラジル人の小児科医、スペイン人の循環器内科医たちは本当に仲良くしてくれて、一緒にパブで飲んだり、ホームパーティをしたりしたのはとても良い思い出です(写真3)。 ACHDはかつては幼少期に亡くなっていた先天性心疾患を持った子どもたちが、手術の技術の向上に伴って成人期を迎えられるようになったため新しく生じてきた分野です。これまでは小児科医がそのまま成人期になっても診療を続けていることが多かったのですが、患者数の激増や成人期独特の併発症などの問題が生じ、成人科への移行が推奨されるようになりました。この情勢に対応するため、日本国内でも2011年に自治医科大学の永井良三学長を委員長に「ACHD循環器内科ネットワーク」が立ち上がり、2021年にはACHD専門医試験も始まりました(私ももちろん受験しました)。私の所属する自治医科大学附属病院でも、小児・先天性心疾患外科の河田政明前教授を中心に、他の施設に先駆けて2008年からACHDセンターを立ち上げましたが、なかなか専門的に先天性心疾患を学んだ循環器内科医がおらず、実際の診療では重症症例に難渋することもしばしばありました。そういった状況の中、私がRBHに臨床留学させていただくことになったのです。 RBHは世界でも最も古く心臓手術を開始した施設の一つで、1947年からの手術実績があるため、術後のACHD患者さんの年齢層が日本の患者さんよりも高く、今後国内で遭遇するであろう様々な合併症を併発した症例を数多く診ることとなりました。先天性大動脈弁疾患に行うRoss手術(自己肺動脈弁を大動脈弁に置換する手術)を開発したRoss先生もRBHに在籍されていましたし、肺血管抵抗を示す単位である「Wood単位」で有名なPaul Wood先生のお名前は、病棟の名称として病院に残っており、数々の著名な先生方の足跡を実感することもできました。 臨床留学ということで、私は当初からカテーテル検査など実臨床を学ばせてもらうことを目的として渡英しましたが、イギリスで医療行為を179

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