臨床薬理の進歩 No.43
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対象と方法効果はIP非合併例と大きな差は認めないが、予後の改善効果に関してはこれまで十分に検討されていない。IPFの標準治療薬であるニンテダニブは、血管新生阻害薬としての抗腫瘍効果に加え、IPFを合併した肺癌の化学療法時における最も重篤な合併症である急性増悪の発症を抑制する効果が期待される。また、既治療ED小細胞肺癌に対するニンテダニブの安全性は第Ⅱ相試験で確認されている。IPを合併した小細胞肺癌の治療における現在みなし標準治療とされているカルボプラチン+エトポシドにニンテダニブを上乗せした3剤併用療法は、IPFを合併した切除不能な小細胞肺癌の将来の標準治療の最有力候補である。 本試験では、IPFを合併した切除不能な小細胞肺癌に対する標準治療の確立のため、多施設共同第Ⅱ相試験による検証を行う。プラチナ製剤併用療法にニンテダニブを併用することでIPFの増悪のリスクを軽減するかどうかを検討するとともに、ニンテダニブによる抗腫瘍効果も示されており、無増悪生存期間や生存期間についても副次的評価項目として評価が可能である。本試験は世界初のIPF合併小細胞肺癌に対する第Ⅱ相試験であり、その結果は臨床に多大なインパクトを与えると考えられる。対象 IPFを合併した切除不能な小細胞肺癌。以下のすべての適格規準を満たし、以下のいずれの除外規準にも該当しないものとする。適格規準: 1) 細胞診もしくは組織診で病理学的に小細胞 2) 切除不能である。(限局型、進展型を含む) 3) 化学療法未施行である。 4) 胸部高分解能CT(HRCT)にて「肺基底部および末梢優位に明らかな蜂巣肺所見」かつ/肺癌と確認されている。又は「肺基底部および末梢優位の線維化に合致する網状影かつ牽引性気管支拡張の所見」を認める。 5) 肺機能検査で%FVC≧50%、%DLco≧30%である。 6) 同意取得日の年齢が20歳以上(上限なし)である。 7) ECOG Performance status(PS)が0-2である。 8) 病変を有する患者(RECIST version 1.1にて測定可能病変の有無を問わない)。 9) 登録前14日以内の最新の検査値(登録日14日前の同一曜日は可)が、以下のすべてを満たす。①好中球数(分節核球+桿状核球)≧1,500 /mm3、②ヘモグロビン≧9.0 g/dL、③血小板数≧10×104/mm3、④総ビリルビン≦1.5 mg/dL、⑤AST≦100 IU/L、⑥ALT≦100 IU/L、⑦血清クレアチニン≦2.0 mg/dL、⑧PT-INR≦2、⑨蛋白尿≦+1、⑩SpO2≧90% (room air)10) 事前に病名および病状について主治医から十分な説明を受けている。11) 試験参加について患者本人から文書で同意が得られている。除外規準; 1) HRCTにおいて肺野のすりガラス陰影が網状影よりも広汎に認められる。 2) 間質性肺炎の明らかな病因がある(感染、塵肺、薬剤、サルコイドーシス、膠原病など)。 3) IPFの急性増悪歴がある。 4) 活動性の重複がんを有する(同時性重複癌/多発癌および無病期間が5年以内の異時性重複がん/多発癌。ただし局所治療により治癒と判断されるCarcinoma in situ(上皮内癌)や粘膜内癌相当の病変は活動性の重複癌/多発癌に含めない)。 5) 有症状の脳転移や髄膜炎を有する。 6) 登録前56日間以内にピルフェニドン、免疫抑制剤(アザチオプリン、シクロホスファミド、4

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