臨床薬理の進歩 No.43
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図 1 従来のエクソソーム検出と ExoScreen 法の比較長時間を要する従来のwestern blotting法やELISA法と比較して、ExoScreen法はわずか1.5時間でエクソソームタンパク質を検出可能である(文献6より改変)。血清から 1.5 時間以内にエクソソームタンパク質を簡便に高感度に検出できるエクソソーム定量法“ExoScreen 法”を開発している(図 1)6)。本法は、エクソソーム膜上のタンパク質を異なる 2 種類のモノクローナル抗体で挟み込み、その抗体が 200 nm以内(エクソソームサイズに合致)に近接する場合のみ発する蛍光シグナルを感知する仕組みであり、血清から直接解析できることが特徴である。ここでは本技術を用いて、肺がん患者血液から免疫チェックポイント阻害剤の奏効因子として上記LC-MS 解析にて得られた結果を元に、候補タンパク質に関して ExoScreen 法を用いた検出を行った。血液中マイクロ RNA の網羅解析 血液中マイクロ RNA の多くは、エクソソームに内包され血液中を循環している。本項目では、ニボルマブを投与される非小細胞肺がん患者の治療前血液サンプルから miRNeasy kit(QIAGEN)142マーカーの検出などを評価した。最終的に、PBS に懸濁されたエクソソームは、MPER(Mammalian protein extraction reagent)を用いてタンパク質を溶解し、trypsin で消化したものを回収し、ペプチド濃度の測定評価を行い、LC-MS 解析を実施した。ExoScreen 法を用いたエクソソームタンパク質の迅速解析 エクソソーム診断の臨床応用において、一番の障害となるのは検出法である。純度の高いエクソソームを回収するには上記のように超遠心法を必要とするが、プロセスに長時間必要となりコストもかかる。以上のことから血液から短時間でエクソソームを検出できるデバイスの開発、エクソソームのバイオマーカーとしての臨床応用、コンパニオン診断薬の導入は臨床的意義が極めて高く、かつ急務である。共同研究者である東京医大の落谷孝広教授らは、これらの問題を解決するため、わずか 5μL の

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