臨床薬理の進歩 No.43
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D2 受容体結合能の変化を検討する。ヒトを対象として薬剤介入による D2 受容体結合能変化を検討した研究は*1 OKITA KYOJI * 2 KATO KOICHI * 3 SHIGEMOTO YOKO * 4 SATO NORIKO * 5 MATSUMOTO TOSHIHIKO 国立精神・神経医療研究センター 病院 精神科、精神保健研究所 薬物依存研究部* 6 MATSUDA HIROSHI 沖田恭治*1  加藤孝一*2  重本蓉子*3  佐藤典子*4  松本俊彦*5  松田博史*6 ドパミン D2 受容体を介した神経伝達の機能低下は、パーキンソン病 1)、注意欠陥・多動性障害 2,3)、摂食障害 4,5)、物質使用障害 6)など幅広い精神・神経疾患に共通する特徴であり、とりわけ物質使用障害については多くの依存性薬物の使用者において、線条体ドパミン D2 受容体結合能が低いことがはじめに要   旨 パーキンソン病、注意欠陥・多動性障害、摂食障害、物質使用障害など幅広い精神・神経疾患にドパミン D2 受容 体を介した神経伝達が損なわれていることがわかっている。特に物質使用障害患者において D2 受容体結合能が健常被験者と比較して低いことや、低いほど衝動性などの物質使用障害に特徴的な行動特性が顕著であること は、過去の研究で繰り返し示されてきた。本研究は選択的アデノシン2A 受容体遮断薬であるイストラデフィリン による薬剤介入で、D2 受容体結合能が上昇するかどうかを検討することを目的としたプラセボ対照ランダム化二重盲検比較試験である。健常者を対象として 2 週間の薬剤介入の前後でポジトロン断層法を行い、線条体のこれまでになく、もし有効だとすれば、物質使用障害をはじめ幅広い疾患の薬物療法の開発に寄与することが期待される。D2 受容体結合能の低さと、高いリスクを伴う意志ポジトロン断層法(PET)研究で繰り返し示されてきた 7,8)。 なかでも覚醒剤使用障害の患者において、線条体決定への親和性や反応制御の障害などの衝動性の指標 9,10)や、薬物希求傾向 11)といった薬物依存症に特徴的な行動表現型との関連も報告されている。一方、我々の研究では覚醒剤使用障害患者でドパKey words:ドパミン D2 受容体、アデノシン2A 受容体、PET、線条体、ランダム化二重盲検比較 国立精神・神経医療研究センター 脳病態統合イメージングセンター、病院 精神科、精神保健研究所 薬物依存研究部国立精神・神経医療研究センター 脳病態統合イメージングセンター国立精神・神経医療研究センター 病院 放射線診療部          同   上国立精神・神経医療研究センター 病院 放射線診療部、一般財団法人脳神経疾患研究所 南東北創薬・サイクロトロン研究センター、 福島県立医科大学 生体機能イメージング講座アデノシン2A 受容体遮断薬による線条体ドパミン D2 受容体に対する影響の評価-PET スキャンを含むプラセボ対照ランダム化二重盲検比較試験-Effects of an adenosine A2A receptor antagonist on striatal dopamine D2-type receptor availability:a randomized double-blind placebo-controlled study using positron emission tomography109

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