臨床薬理の進歩 No.43
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タンパク質糖鎖構造A腫瘍細胞と正常細胞におけるPIGR上の糖鎖構造の違いを明らかにする図1 腫瘍抗原上の糖鎖構造糖鎖構造AUASLectinCD28タンパク質糖鎖構造B4-1BB図2 新規がん免疫療法の開発(DUAL CAR-Tシステムの構築)CD28Gal44-1BBGal4レクチン ACD284-1BB糖鎖構造Bレクチン Aタンパク質抗原に至ってはほぼ探索し尽くされており、今後大きな発展は望みにくい状況である。そこで、同じタンパク質抗原を発現している正常細胞と腫瘍細胞とを見分ける手法が今後のCAR-T療法の発展においては重要であり、また学術的にも重要である。 正常細胞と腫瘍細胞の両方に発現を認めるタンパク質抗原の違いの一つとして翻訳後修飾である糖鎖が挙げられる。糖鎖は、遺伝子(第一生命鎖)、タンパク質(第二生命鎖)に次ぐ第三生命鎖と呼ばれ、ポストゲノム研究において多くの研究が行われている。がん細胞の目印になる腫瘍マーカーのうち、消化器がんや膵臓がんの腫瘍マーカーで腫瘍細胞の糖鎖構造に着目した新規がん免疫療法の開発糖鎖構造AあるCA19-9や肺がんにおけるSLXなどが糖鎖抗原の腫瘍マーカーとして知られている。また、正常細胞ががん化することにより細胞表面の糖鎖が変化することは既に多くの報告例がある。我々は、共同研究による糖鎖解析により、前立腺肥大症と前立腺がんにおける特定タンパク質抗原(PSA)の糖鎖構造の違いを明らかにしてきた6)。このことは、他のがん種・他の抗原においても糖鎖の違いを利用して見分けることが可能であることを意味している。 糖鎖解析は非常に複雑であり、遺伝子解析における次世代シーケンサーのような手軽に解析できるツールがないため開発が進んでいない。レクチンは糖鎖の認識に関わるタンパク質であり、日本では世界に先駆けてレクチンの研究が進められており、世界最先端の解析ツールが開発されている。我々はこうした世界最先端の解析ツール(高密度レクチンアレイ法:独自の糖鎖解析技術)にアクセスできる研究グループである。本研究では世界最先端のグライコーム解析を用いて、正常細胞と腫瘍細胞に発現を認めるPIGRタンパク質の糖鎖構造の違いを明らかにし、PIGR糖タンパク質抗原を標的とした新規がん免疫療法の開発を最終目的とする(図1、2)。99PIGRGal4Gal4ProteinPIGRVHVLPIGRPIGRPIGRVHVLVHVLがん細胞がん細胞正常細胞がん細胞正常細胞

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