小胞輸送異常NPC1欠損神経脱落遊離型コレステロール蓄積エンドソームにおいてセラミドとCerKが共局在C1P生成の亢進グリア細胞活性化考 察ニーマン・ピック病C型の病態解明と新規治療薬の開発図 6 本研究の想定モデル138 日であった。これらの結果から、CerK とグルコ約 50 種類のヒット化合物を得ることに成功した。shown)。さらに、本研究では NPC 細胞、NPCシルセラミド合成酵素を同時に阻害することがNPC の治療に有効である可能性が示唆された。新規 CerK 阻害薬の開発 約 20 万種類の化合物ライブラリーから CerK 阻害作用を有する化合物を探索した。精製した CerK を用いた in vitro でのハイスループット・スクリーニングおよび細胞におけるスクリーニングにより、現在は、NPC 細胞や疾患特異的 iPS 細胞を活用したスクリーニングにより、化合物を絞り込んでいる。 NPC は後期エンドソーム / リソソームに遊離型コレステロールやスフィンゴ脂質が蓄積することが知られている。本研究においても、NPC1 が欠損した細胞やマウス脳において、セラミド、スフィンゴミエリン、スフィンゴシンなど、様々なスフィンゴ脂質が蓄積していることを確認した(data not shown)。また、NPC 患者の血漿中のグルコシルセラミドおよび C16:0- セラミドが健康成人に比べて増加していることが報告されている 8)。本研究においてもこれらスフィンゴ脂質量が NPC 患者の血漿中で健康成人に比べて高いことを確認した(data not マウス脳、および NPC 患者の血漿において、C1Pの量が正常対照群に比べて有意に高いことを新たに発見した(図 1A-D)。また、蛍光標識セラミドを用いた実験により、NPC 細胞では CerK に依存したC1P の生成が亢進していることが示された(図 1E、F)。CerK の細胞内局在は主にエンドソームであることが知られている。本研究においても CerK は主にエンドソームに局在しており、この細胞内局在は NPC1 -/- 細胞とコントロール細胞の間で顕著な差は観察されなかった(図 2A)。CerK の基質であるセラミドは NPC1 -/- 細胞においてエンドソームに蓄積することが報告されている 9)。本研究においてもNPC1 -/- 細胞では蛍光標識セラミドがエンドソームに蓄積し、この異常な局在は LDL を含まない血清で細胞を培養することにより改善されることが示された(図 2B)。従って、NPC 細胞では NPC1 が欠損することで遊離型コレステロールが蓄積し、これが原因でセラミドがエンドソームに蓄積し、CerK を介した C1P の生成が亢進する可能性が考えられる。さらに、この C1P 生成の亢進が Rab9依存性の小胞輸送を阻害することで、2 次的な遊離型コレステロールの蓄積を誘導する可能性がある(図 6)。 NPC1 -/- マウスの CerK を遺伝的に欠損させると、遊離型コレステロールの蓄積が軽減し、生存期間が延長することが本研究により示された。NPC ではグリア細胞が活性化して神経脱落を促進することが知られている。NPC1 -/- マウスの脳においてはTNFα、IL-1β、IL-6 のレベルが高いこと 10,11)、NPC 細胞においてはコレステロールが蓄積するエンドソーム / リソソームに Toll-like receptor 4が蓄積することで、IFN-β、IL-6、IL-8 などのサイトカインを恒常的に分泌することが報告されている 12)。また、NPC1 -/- マウスにおいて IL-6 を遺伝的に欠損させると、グリア細胞の活性化が抑制され、生存期間が延長することも報告されている 12)。従って、NPC1-/- マウスでは、遊離型コレステロールの蓄積によるサイトカインの産生亢進がグリア細胞を活性化し、神経脱落を誘発すると考えられる。95
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