臨床薬理の進歩 No.43
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結  果フィリピンの蛍光を観察した。ニューロンは50μg/mL LDLを含むニューロン分化培地で培養し、4% PFAで固定した。100μg/mLフィリピンで30分間染色し、蛍光顕微鏡(Olympus IX83)にてフィリピンの蛍光を観察した。免疫染色 マウス脳の組織切片を透過処理(0.3% Triton X-100、2.5%goat serumで30分間インキュベート)し、1次抗体を1:200で希釈して1晩、4℃でインキュベートした。2次抗体は1:500で希釈して1時間、室温でインキュベートした。染色像は、共焦点レーザー顕微鏡(Zeiss LSM780)にて観察した。BODIPY-Cerの細胞内局在の観察 細胞に10μM BODIPY-Cerを添加して30分間、37℃でインキュベート後、HBSSで細胞をwashし、さらに2時間37℃でインキュベートした。4% PFAで細胞を固定し、染色像を共焦点レーザー顕微鏡(Zeiss LSM780)にて観察した。BODIPY-C1Pの測定 12 well plateで培養した細胞に10μM BODIPY-Cerを添加して2時間、37℃でインキュベートした。細胞をwellから剥がし、上清も含めてBligh and Dyer法にて脂質を抽出した。全脂質をSilica Gel60 TLC plateにスポットし、展開した(1-butanol : acetic acid : water = 3:1:1)。BODIPYの蛍光画像をFujifilm LAS4000にて取得した。スフィンゴ脂質の定量 C1Pを含むスフィンゴ脂質の定量は高速液体クロマトグラフ質量分析装置LC/MS/MS(AB SCIEX 5500 QTrap)を用いた。定量はVirginia Commonwealth University Lipidomics/Metabolomics Coreに委託した。統計解析 実験結果は平均値(mean)±標準誤差(SEM)で示した。得られたデータはunpaired two-tailed Student’s t-testまたはone-way ANOVAにて検定を行った。生存曲線はKaplan-Meier法を用いて作成し、log rank法にて検定を行った。p < 0.05の場合に、統計学的に有意な差があると判断した。NPCにけるC1P量の上昇 本研究ではNPCのモデル細胞として、CHO細胞のNPC1を遺伝的に欠損した細胞(NPC1-/-)およびNPC患者に由来する皮膚線維芽細胞(NPC1*)を用いた。どちらの細胞も、正常対照細胞に比べて細胞内に遊離型コレステロールが蓄積していることをフィリピン染色により確認した(図1A)。これら細胞に含まれるC1P量をLC/MS/MSにより測定したところ、NPC1-/-細胞およびNPC1*細胞ともに、正常対照細胞に比べてC1P量が増加していた(図1B、C)。また、NPC患者および健康成人の血漿に含まれるC1P量を測定したところ、健康成人に比べてNPC患者の血漿ではC1P量が増加していた(図1D)。次に、蛍光標識されたセラミド(BODIPY-Cer)を細胞に添加して2時間インキュベートし、細胞内でセラミドから産生されたC1P量を測定した。その結果、NPC1-/-細胞およびNPC1*細胞において、正常対照細胞に比べてBODIPY-C1Pの産生が促進され、この産生促進はCerK阻害剤のNVP-231によって抑制された(図1E、F)。従って、NPC細胞ではCerKを介したC1Pの産生が亢進していることが示唆された。NPCにけるCerKとセラミドの細胞内局在 CerKのmRNA量および細胞ホモジネートのCerK活性を測定したところ、NPC細胞と正常対照細胞の間で顕著な差は認められなかった(data not shown)。そこで、BODIPY-CerとCerKの細胞内局在を共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。CerKの細胞内局在は、蛍光蛋白質mCherryを融合したCerK(CerK-mCherry)を一過性発現させて観察した。88

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