臨床薬理の進歩 No.43
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方  法ニーマン・ピック病C型の病態解明と新規治療薬の開発(P237S, I1061T)。CHO 細胞は 10% FBS を含むHam’s F-12 medium で、皮膚線維芽細胞は 15% FBS を含む MEM で培養した。マウス NPC1 -/- マウス(BALB/cNctr-Npc1m1N/J、Jackson Laboratory、stock no. 003092)は道川誠先生(名古屋市 立 大 学 ) か ら ご 供 与 い た だ い た。C57BL/6 CerK -/- マウスは五十嵐靖之先生(北海道大学)からご供与いただいた。NPC1+/- マウスと CerK +/- マウスを交配させ、NPC1+/+CerK +/+(WT)、NPC1+/+CerK -/-(CerK -/-)、NPC1-/-CerK +/+(NPC1-/-)、NPC1-/-CerK -/-(DKO)マウスを得た。マウスを用いた実験は千葉大学動物実験委員会の承認を得て実施した。ヒト血漿サンプル 健康成人(男性 7 人、女性 8 人)および NPC患者(男性 2 人、女性 2 人)の血液から血漿サンプルを作製した。ヒト血漿サンプルを用いた研究は千葉大学および鳥取大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号 : 鳥取大学 17A110、千葉大学 248-3)。iPS 細胞の作製とニューロンへの分化 NPC 患者に由来する皮膚線維芽細胞(GM03123、NPC1*)に Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc を遺伝子導入して iPS 細胞を樹立した。健康成人に由来するiPS 細胞は山中伸弥先生(京都大学)が樹立した201B7 株を用いた。また、赤松らが報告した高効率な神経分化誘導法 7)を用いて、iPS 細胞をニューロンに分化誘導した。フィリピン染色 細胞は 4% paraformaldehyde(PFA)で固定した。マウス脳は 4% PFA で固定し、30% スクロースで2 日間インキュベート、OCT コンパウンドで包埋し、クライオスタットを用いて 30μm の切片を作製した。細胞と切片は 100μg/mL フィリピンで 2 時間染色し、共焦点レーザー顕微鏡(Zeiss LSM780)にて生存期間が延長する 3)。また、NPC ではスフィンゴミエリン(sphingomyelin; SM)も蓄積しており、この SM レベルの上昇が遊離型コレステロールの蓄積を誘導するというモデルも提唱されている。SM 分解酵素の 1 つである酸性スフィンゴミエリナーゼを NPC 細胞に添加すると、SM レベルが減少し、遊離型コレステロールの蓄積が軽減されることが示されている 4)。また、私達の研究グループは、SM 合成に関与するセラミド輸送蛋白質 CERT の阻害剤 HPA-12 が、NPC 細胞において SM レベルを減少させ、遊離型コレステロールの蓄積を軽減することを報告した 5)。このように、スフィンゴ脂質代謝の異常が、遊離型コレステロールの 2 次的な蓄積を誘導する可能性が示唆されている。 本研究では、NPC における遊離型コレステロールの蓄積とスフィンゴ脂質代謝異常との関連性について解析を行った。その結果、NPC1 を欠損した細胞やマウスにおいて、セラミド -1- リン酸に比べて高いことが明らかになった。C1P はセラミドがセラミドキナーゼ(ceramide kinase; CerK)によりリン酸化されて生成される。本研究では、NPC細胞の CerK を阻害すると遊離型コレステロールの細胞内輸送異常が改善すること、さらに、NPC1 -/-マウスの CerK を遺伝的に欠損させるとマウスの生存期間が延長することが明らかになった。従って、CerK の阻害は NPC に対する新たな治療戦略になることが明らかになった。細胞と細胞培養 CHO 細胞に由来する NPC1 欠損細胞株 A101(NPC1 -/-)および、その親株 JP17(WT)は以前に鳥取大学医学部において樹立された 6)。NPC 患者に由来する皮膚線維芽細胞 GM03123(NPC1*)および健 康 成 人 に 由 来 す る 皮 膚 線 維 芽 細 胞 GM00038(Normal)は Coriell Institue から購入した。NPC1*細胞は NPC1 蛋白質に 2 つの変異を有している(ceramide-1-phosphate; C1P)のレベルが正常対照群87

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