臨床薬理の進歩 No.42
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*1 ZAMAMI YOSHITO *2 NIIMURA TAKAHIRO *3 KAWASHIRI TAKEHIRO *4 GODA MITSUHIRO *5 HAMANO HIROFUMI *6 YAGI KENTA *7 AIZAWA FUKA *8 KOBAYASHI DAISUKE *9 SHIMAZOE TAKAO *10 IZAWA-ISHIZAWA YUKI *11 YANAGAWA HIROAKI *12 ISHIZAWA KEISUKE 座間味 義人*1 新村 貴博*2 川尻 雄大*3 合田 光寛*4 濱野 裕章*5 八木 健太*6相澤 風花*7 小林 大介*8 島添 隆雄*9 石澤 有紀*10 楊河 宏章*11 石澤 啓介*12はじめに要   旨 医薬品開発には膨大な費用と時間が必要となる。シーズ探索の段階で有効性を示した化合物であっても、実用化研究の段階で予想外の有害反応や体内動態の不備が発覚し、開発が頓挫する場合も多い。基礎研究と臨床開発との間に横たわるこのようなギャップは「死の谷 (the valley of death) 」として知られ、創薬における大きな課題となっている。アメリカ食品医薬品局 (Food and Drug  近年、創薬に成功する確率を高めるために、医療情報データベース、遺伝子発現データベースをはじめとする様々なデータベースが創薬に活用されている。様々ながんの治療に用いられるオキサリプラチンの有害反応である末梢神経障害は臨床上問題となっているが、その予防法は確立していない。本研究では、大規模医療情報データベースや遺伝子発現データベースを用いたビッグデータ解析、基礎研究、臨床研究を融合した新しい手法を用いて、オキサリプラチン誘発末梢神経障害(OIPN)の予防薬を探索した。その結果、ビッグデータ解析によりスタチン系薬剤がOIPN予防薬として抽出された。さらに、基礎研究および後方視的カルテ調査により、スタチン系薬剤の OIPNに対する有効性が明らかになった。本研究の結果から、大規模医療情報データベースにより抽出された スタチン系薬剤がOIPNに対する予防薬として臨床応用可能であることが示唆される。徳島大学臨床薬理学大学院 医歯薬学研究部 臨床薬理学、徳島大学病院 薬剤部徳島大学臨床薬理学大学院 医歯薬学研究部 臨床薬理学九州大学大学院 薬学研究院 臨床育薬学徳島大学病院 総合臨床研究センター徳島大学病院 薬剤部徳島大学病院 総合臨床研究センター徳島大学病院 薬剤部九州大学大学院 薬学研究院 臨床育薬学       同   上徳島大学 AWAサポートセンター徳島大学病院 総合臨床研究センター徳島大学臨床薬理学大学院 医歯薬学研究部 臨床薬理学、徳島大学病院 薬剤部Administration; FDA) によって承認を受けた医薬品の数は1996年をピークに減少しているが、その一方で医薬品開発に対する投資額は上昇の一途を辿っており、創薬のコストは年々高まり続けている。このような現状を打開しうる創薬戦略として、ドラッグリポジショニングが注目されている。ドラッグリポジショニングとは、既存承認薬の本来の適応とは異なる新たな使用方法を探索・発見する研究手法である。既存承認薬はヒトに投与した場合の有害反応や体内動態に関する知見がすでに蓄積Key words:医療ビッグデータ、ドラッグリポジショニング、オキサリプラチン、末梢神経障害、GSToxaliplatin-induced peripheral neuropathy using big data to facilitate drug repositioningIdentification of prophylactic drugs for 72医療ビッグデータを活用したドラッグリポジショニングによるオキサリプラチン誘発末梢神経障害の予防薬開発

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