臨床薬理の進歩 No.42
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 新型コロナウイルスの勢いが衰えない。大都市のみならず筆者の暮らす九州の各県においても連日、過去最高の感染者が報告され医療の逼迫が危惧されている。このコロナ禍の1年は治療薬開発にしてもワクチン開発にしても我が国と米国での実力差を目の当たりにした年であった。米国はワクチン開発におよそ2兆円の研究費を投入したワープスピード作戦(Operation Warp Speed)を展開し、世界に先駆けて世界初のmRNA型ワクチンの承認に結びつけた。その予算規模も驚きであるが、同じ予算を我が国で使ったら同じような作戦を展開し同等の成果をあげることができたのだろうか? 臨床薬理先進国の底力(人・物・資金 x 戦略の掛け算)を見せつけられた気がした。 下地のないところにいきなりペンキをぬっても決して美しく仕上がらないのと同じで、下地のないところに応用的な研究だけを推進させてもうまくいかない。臨床薬理学的研究では、基礎研究、トランスレーショナル研究、臨床研究、そして実臨床への応用へと繋いでいく必要があり、それを可能としているのは多様性のある研究者であろう。本誌には、平成30年度研究奨励金による研究報告19編、平成29年度研究奨励金による研究報告1編、平成28年度海外留学助成金による研修報告1編が掲載されている。コロナ禍においても病態メカニズム研究や、新規治療薬・診断法の開発、PK/PD解析、RCTはもちろん、ビッグデータのAI解析を活用した新しいタイプの創薬まで実に多様性のある臨床薬理学的研究が継続しており、大きな研究成果を出していることが読み取れる。財団の支援を受けている研究者はまさに多士済々であり、これからの我が国の臨床薬理学の発展におおいに貢献していただきたいと思う。そのような成果を可能とすべく多くのプログラムを支えてくださった財団の関係者の皆様に深く感謝申し上げたい。2021年5月上村 尚人ま え が き

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