臨床薬理の進歩 No.42
45/228

結  果IVR治療 肝動脈注入については、ラット大腿動脈から1.5 Frカテーテルを肝動脈まで挿入し、それぞれ抗癌剤動注を実施した。腫瘍移植 患者10症例より切除した腫瘍を、各5匹のラットに移植した。ラットへの腫瘍移植は、イソフルラン吸入麻酔下で腹部を開腹して、肝臓左葉に切開を入れた。切開部を入口とした肝臓にポケットを作成し、1 mm角腫瘍をポケット内に移植した。移植後、止血剤で切開部を覆い、止血とともに、肝臓を腹腔内に戻し、皮膚切開部を縫合にて閉創した。術式は先行研究で確立したLiver pocket methodを用いた4,5)。造影CT ラット正常肝臓が高濃度に造影効果を示す造影剤(Exitron nano 12000、Miltenyi Biotec)を用いて、低濃度として描出される肝臓腫瘍の検出を図った。移植4・8週後にCTを撮像し、腫瘍の有無と腫瘍サイズを測定した。継代移植実験群 継代移植4週後、造影CTで最大径3 mm以上の腫瘍が確認されたラットを3種の群に割り付け、下記のとおり肝動注および静注を実施した。静注群は尾静脈から投与を行った。①コントロール群 ②シスプラチン(2 ㎎/kg)肝動注群 ③シスプラチン (2 ㎎/kg)静注群。全例、移植8週後に屠殺した。また、移植腫瘍のラットへの生着成否も併せて評価した。検討項目 以下の通りである。①CTおよび病理標本から腫瘍生着の評価を行った。②CTおよび病理標本の腫瘍サイズからIVR治療の効果判定を行った。腫瘍生着の評価 肝細胞癌10症例からの肝細胞癌1 mm角標本を各5匹のラットに移植した。移植4週後に、造影CTで10症例のうち2症例で患者由来肝細胞癌のラット肝内生着(20%)を確認した。8症例では、肝細胞癌のラット肝内の生着が確認できなかった。8症例は、CT撮影後、屠殺して、肉眼的にも腫瘍の生着が確認できていないことを確認した。生着した2症例においては、それぞれラット5匹中3匹、5匹中2匹の生着が見られた。(図1)腫瘍の継代 生着した2症例(以下、症例1・症例2とする)については、最初の移植8週後に腫瘍を摘出し、再度ラット3匹ずつに移植した。4週後にCTにて腫瘍の生着を評価し、6匹全例の生着を確認した。この6匹のPDXモデルラットを以下のIVR治療効果判定試験に使用した。IVR治療効果判定試験 症例1・症例2それぞれのPDXモデルラット各3匹を、コントロール、シスプラチン肝動注、シスプラチン静注に割り付けて投与を行い、8週後に腫瘍径を評価した。 症例1では、コントロール群は治療前CTで腫瘍径6.2 mm × 5.1 mmで、治療後4週間経過した時点でのCTで腫瘍径8.3 mm × 7.6 mmとなった。シスプラチン肝動注群は治療前CTで腫瘍径10.9 mm × 5.9 mmで、治療後4週間経過した時点でのCTで腫瘍径9.1 mm × 6.3 mmとなった。シスプラチン静注群は治療前CTで腫瘍径7.1 mm × 5.8 mmで、治療後4週間経過した時点でのCTで腫瘍径8.9 mm × 7.3 mmとなった。 症例2では、コントロール群は治療前CTで腫瘍径7.9 mm × 6.6 mmで、治療後4週間経過した時点でのCTで腫瘍径9.7 mm × 8.2 mmとなった。シスプラチン肝動注群は治療前CTで腫瘍径7.9 mm × 5.9 mmで、治療後4週間経過した時点でのCTで腫瘍径3131

元のページ  ../index.html#45

このブックを見る