臨床薬理の進歩 No.42
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*1 KAGEYAMA KEN 影山 健*1 はじめに要   旨 ヒト腫瘍異種移植(Patient-Derived tumor Xenograft: PDX)動物モデルは、患者から切除した腫瘍を直接免疫不全動物に移植することによって、患者に代わり、前もって癌治療を動物内で行うことができる、癌治療スクリーニングプラットフォームである。本研究は、患者腫瘍を用いて、経カテーテル的に動脈内投与可能なラット上でPDXモデルを確立することにより、癌治療における経動脈治療の有効性を評価し、オーダーメイド治療への 貢献が目的である。本研究では、2つの研究を行う。①手術で摘出された患者由来の肝細胞癌(HCC)組織を、直接免疫不全ラットの肝臓に同所性移植した肝細胞癌PDXモデルを作成する。②このHCC-PDXモデルで、 患者個人に代わって、肝動注療法や肝動脈塞栓術といったIVR治療(インターベンショナルラジオロジー: 画像下低侵襲治療)を実施し、効果的な治療を探求する。生着率は低いが、PDXモデルの樹立が可能であった。樹立したPDXモデルに対して、抗癌剤効果判定試験を試みた。大阪市立大学医学部大学院医学研究科 放射線診断学・IVR学デル内でそのまま再現できる。PDXモデルは、患者に代わり、前もって癌治療を動物上で行うことができる、現在世界で期待されている癌治療スクリーニング法である3)。ただし、ほとんどのPDXモデルは、マウス皮下に異所性に腫瘍移植したモデルである。皮下移植モデルは、腫瘍生着率が極めて悪く、時間を要する。皮下ではなく、本来腫瘍が存在する同所性に移植したPDXモデルでは、抗癌剤の効果は臨床と同等の効果を示す。我々は先行研究で、同所性肝移植マウスモデルを開発することに成功した4,5)。また本研究の予備実験では、癌腫は異なるが、原発膵癌の肝移植マウスモデルとラットモデルの開発に成功した6,7)。 PDXモデルも従来の細胞株と同様に、患者癌組織を生きたまま保存させるためには幾重に継代をKey words:肝細胞癌、異種移植、免疫不全ラット、PDX、Interventional RadiologyDevelopment of an orthotopic patient-derived hepatocellular carcinoma tumor xenograftrat model and evaluation of treatment efficacy of interventional radiology  従来、抗癌剤開発において、培養皿で飼育されたヒト癌細胞株で、抗癌剤の抗腫瘍効果判定試験が行われてきた。しかし、新規に開発された抗癌剤のうち、およそ80%の薬剤が、ヒト臨床試験の段階で、抗腫瘍効果がないと判定されている1)。2016年、アメリカ国立がん研究所は、25年来実施されてきた培養ヒト細胞株を用いた抗癌剤のスクリーニングを中止した2)。新しい抗癌剤スクリーニングパネルとして、ヒト腫瘍異種移植(Patient-Derived tumor Xenograft: PDX)マウスモデルの運用を開始した。PDXモデルとは、手術や生検で摘出された患者腫瘍を、直接免疫不全動物に移植したモデルを指す。患者内に存在した腫瘍の性質を、PDXモ29患者由来肝細胞癌による同所性PDX肝癌ラットモデルの開発とIVR治療効果判定

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