臨床薬理の進歩 No.42
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CAMHについて研究について写真4 CAMH (College site)の外観いておりましたが、無事に越冬することができました。このように、トロントははじめての海外生活者にとっても非常に過ごしやすい街であり、留学に最適な都市といえるのではないかと思います。実際に多くの日本人が家族連れで留学しており、留学者の情報共有のためのメーリングリストもあります。 CAMHはQueen Street siteとCollege Street site(私の研究室はこちらにあります)の2つに分かれており、450の病床を有する最大規模の精神科専門病院です(写真4)。2013年度の報告によりますと、約380人の医師と3,000人のスタッフが働き、年間約4,500人の入院、48万人の外来受診、7,400人の救急外来受診があります。CAMHには「老年期病棟(60歳以上の患者が対象)」、「若年者病棟(主に20歳未満の患者が対象)」、「一般急性期病棟」などの病棟があり、また、疾患別の病棟、例えば「統合失調症病棟」や「気分障害病棟」というものもあります。そのCAMHにとって歴史的な出来事が2018年に起きました。それは、匿名による約100億円の寄付があったということです。カナダでは寄付の文化が根づいており、80%以上のカナダ人が寄付の経験を持ち、平均金額は400カナダドルに達するようです。特定の研究や施設に対して個人や団体が多額の寄付を行うこともよくあり、研究施設名に「XX Family」と冠せられることも珍しくありません。こういった背景がある中で、今回の多額の寄付はCAMHの将来に大きな影響を与えてくれたと言えるでしょう。事実、これまでもCAMH内にはポスドク向けの内部の競争的奨学金制度がありましたが、今回の寄付を受け、その制度が拡充したり、新たな施設の建設が始まったりしています。 私が従事している研究について触れたいと思います。私の研究室は薬理遺伝学/薬理ゲノム学のラボであり、遺伝因子による個々人の薬の効果や副作用の差を研究しています。特に、抗精神病薬(統合失調症に対する主な薬剤)の副作用である抗精神病薬誘発性体重増加(antipsychotic-induced weight gain: AIWG)に焦点を当てた研究を中心に行っており、私もそれに携わってまいりました。AIWGは抗精神病薬の副作用として一般的ですが、心血管系疾患のリスク上昇にもつながる可能性があるため非常に注意を要する副作用です。AIWGには177

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