臨床薬理の進歩 No.42
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***AB***B正常ヒトおよびIPAH患者由来PASMCsにおけるCLCNの発現解析 正常ヒトおよびIPAH患者由来PASMCsにおいて、電位依存性Cl-チャネルを構成するCLCNファミリーの発現プロファイルを定量的リアルタイムPCR法と免疫細胞染色法によって解析した。定量的リアルタイムPCR解析の結果、正常ヒトPASMCsには、CLCN2、CLCN3、CLCN5、CLCN6、CLCN7の発現がmRNAレベルで認められた(図4A)。IPAH患者由来PASMCsでも同様に、CLCN2、CLCN3、CLCN5、CLCN6、CLCN7の発現が検出された。興味深いことに、正常ヒトPASMCsと比較して、IPAH患者由来PASMCsでは、CLCN2とCLCN6の発現が有意に亢進していた。また、発現レベルが非常に低いが、CLCNKAも有意な発現増加が認められた。免疫細胞染色の結果、正常ヒトPASMCs と比較して、IPAH患者由来PASMCsでは、CLCN2タンパク質の発現増加が観察された(図4B)。以上の結果より、IPAH患者由来PASMCsでは、電位依存性Cl-チャネルを構成するCLCN2が発現増加することが分かった。図4 正常ヒトおよびIPAH患者由来PASMCsにおけるCLCNの発現解析正常ヒトおよびIPAH患者由来PASMCsにおいて、電位依存性Cl-チャネルを構成するCLCNファミリーの発現量を比較解析した。A:正常ヒトおよびIPAH患者由来PASMCsにおけるCLCN遺伝子の発現。各遺伝子の発現量は、ACTB(β-actin)の発現量で規格化した。データは、正常ヒトPASMCsは各3例、IPAH患者由来PASMCsは各5例の平均値±標準誤差(mean±S.E.)で示した。有意差検定には、Student’sのt検定を用いた(*p<0.05 vs. normal)。B:正常ヒトおよびIPAH患者由来PASMCsにおけるCLCN2チャネルタンパク質の発現。各10例の実験結果より、典型的な細胞染色像を示した。IPAH患者由来PASMCsにおけるNFA感受性Cl-チャネル電流 IPAH患者由来PASMCsに機能発現するCl-チャネル電流について、ホールセルパッチクランプ法を適用して解析した。電位依存性Cl-チャネル電流を検出するために、パッチ電極内に120 mM Cs+と20 mM TEAを添加して、K+チャネル電流を遮断した。また、電極内に5 mM EGTAも添加し、Ca2+活性化Cl-チャネル電流も抑制した。PASMCsは、保持電位0 mVから-140〜+100 mVに1 sec、脱分極または過分極させた。IPAH患者由来PASMCsにおいて、過分極刺激に伴って内向き電流が、また、脱分極刺激に伴って外向き電流が観察された(図5A)。電流-電圧関係から、IPAH患者由来PASMCsで観察された電流が、内向き整流性をもつことが分かった。また、その内向きおよびA外向き電流は、100 μM NFAによって顕著に抑制されることも分かった(図5B)。以上の結果より、IPAH患者由来PASMCsには、内向き整流性をもった電位依存性Cl-チャネルが機能発現していることが示唆された。164

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