臨床薬理の進歩 No.42
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( ( A))%%ppSFRPSFRP考  察ADA発現と臨床的有効性の関連 ニボルマブまたはペムブロリズマブを投与され、有効性評価が可能であった全ての症例を対象に、ADA発現とPRFSの関連を検討した。その結果、最終サンプルのADAが陽性であった症例は、陰性であった症例と比べて、PRFS中央値が短い傾向が認められた(46対119日、p = 0.0827;図5A)。さらに、ADAが持続的に陽性であった症例では、他の患者と比べてPRFSが有意に短いことが判明した(52対128日、p = 0.0065;図5B)。遅発性のirAE発現症例と文献レビュー 本研究の対象患者の中に、ニボルマブ治療終了後8.6か月後に二次性副腎機能不全が発現した(図3矢頭)非小細胞肺がん症例を経験した(図6)。診断時におけるニボルマブ血中濃度は0.2 µg/mLであり、体内に薬物が長期に残存していたことが明らかとなった。 2019年10月末時点において、ニボルマブおよびペムブロリズマブ治療終了後に発現したirAEに関して、過去に報告された文献をレビューした(表3)。遅発性irAEの種類として、皮膚粘膜障害や副腎不全が多く、また大腸炎や間質性肺炎・肺線維症、肝炎などの報告もあり、その大半は治療終了後1年以内に発現していることが明らかとなった。さらに、最も遅い発現時期として、ペムブロリズマブ治療図5 抗薬物抗体最終サンプル陽性(A)および持続的陽性(B)と臨床的有効性の関連(A)n=140、(B)n=140。ADA, anti-drug antibody; PRFS, progression-free and recurrence-free survival.2群間の比較には、log-rank検定を用いた。終了後23か月経って大腸炎が発現した症例報告もあった。 本研究では、リアルワールド・プラクティスにおいて、ニボルマブおよびペムブロリズマブ投与患者を対象に、両薬物のPKプロファイルおよびPK/PD–ADAの関連性を調べた。その結果、両薬物の消失半減期は、過去の報告とよく一致していたが1)、その消失には大きな個人差が認められた。その詳細な理由は不明であるが、IgGのターンオーバーに関連するFcRnと各薬物のFc領域の結合親和性の個人差が、原因の一つとして考えられる。さらに、両薬物の治療開始後早期のトラフ濃度とレスポンスが、有意に相関することが明らかとなった。本結果は、過去の報告とも対応するものであり、全身クリアランスが大きく薬物曝露量が低い患者において、投与量を最適化することによって、治療効果が改善される可能性が示唆された3,6)。 今回、日本人におけるPD-1阻害薬に対するADAの発現状況について、初めて明らかにすることが出来た。解析対象例数が限られていたため、明確な結論を導くことは困難であるものの、ニボルマブまたはペムブロリズマブに対するADAは、治療アウトカムに対して影響を及ぼす可能性が示唆B146

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