臨床薬理の進歩 No.42
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方  法結果が示され、2019年8月に開発が終了となった。しかしながらDLL3のSCLCに特異的に発現するという特性は不変であり、今なお有望な治療標的である。 近赤外光線免疫療法(NIR-PIT)は2011年に米国NIHの小林らによって報告された新機序の癌治療法である4)。標的細胞が発現する抗原に対する特異的抗体にIR700という光感受物質を結合させ、抗体−光感受物質が細胞表面に結合しているときに波長700 nm付近の近赤外光を照射すると、細胞にnecrosisが誘導される5)。抗体と光照射によって二重に対象を選択しており、極めて選択性の高い治療法である。現在、EGFRを標的とした局所再発頭頸部扁平上皮癌に対する国際第3相試験が実施されており(LUZERA-301、NCT03769506)、EGFR高発現の再発既治療Ⅳ期頭頸部癌に対して2020年9月25日に厚生労働省の限定早期承認を受けた。 今回我々は抗DLL3モノクローナル抗体であるRovalpituzumabとNIR-PITを用い、SCLCに対する新機序治療法確立を目的に研究を行った。研究デザイン 全ての動物実験は、名古屋大学動物管理使用委員会の実験動物資源の管理および使用に関するガイド(#00238)に従って適切に行われている。名古屋大学の倫理委員会、臨床研究委員会により、ヒトサンプル(外科切除検体)の使用について承認を受けて実施された(承認#2018-0046)。外科切除検体の免疫染色 2004年4月から2015年12月に名古屋大学医学部附属病院で手術を受けた小細胞肺癌(SCLC)、大細胞神経内分泌肺癌(LCNEC)、または肺カルチノイドと病理学的に診断された日本人患者の切除標本でDLL3の免疫染色を行った。4 μmの厚さの切片をホルマリン固定パラフィンから作製した。腫瘍サンプルを埋め込み、ガラススライド上に配置した。エピトープ検索は、pH 9バッファー(Epitope Retrieval Solution pH 9; Leica Biosystems、Nussloch、Germany)と圧力鍋を使用して行った。ウサギポリクローナル抗DLL3抗体(1:1000; Delta3/DLL3 IHC-plusTM; LS Bio、Seattle、WA、USA)および西洋ワサビペルオキシダーゼ−ポリマー二次抗体(EnVision +システムHRP標識ポリマー抗ウサギ; Agilent、Santa Clara、CA、USA)を使用した。比色分析は、3,3'-ジアミノベンジジン(ImmPACT DAB Substrate; Vector、Burlingame、CA、USA)とヘマトキシリンを使用して実施した。 DLL3の発現は、明視野顕微鏡下で100倍および400倍の倍率で評価し、陽性染色は、以前のガイダンスに基づいて3)、細胞質か膜性かにかかわらず、任意の強度での腫瘍細胞の1%以上の染色として定義した。試薬 水溶性シリカ-フタロシアニン誘導体IRDye 700DX NHSエステルを、LI-COR Biosciences (Lincoln、NE、USA)から購入した。抗DLL3モノクローナル抗体のRovalpituzumabはCreative Biolabs(NY、USA)から入手した。他の全ての化学物質は試薬級を使用した。細胞株 SBC3およびSBC5(日本人患者由来のヒトSCLC細胞株)は、日本研究バイオリソースコレクション(JCRB)から入手した。3T3(マウス線維芽細胞)、H69(ヒトSCLC細胞)およびH82(ヒトSCLC細胞)は、American Type Culture Collection(ATCC)から入手した。Cdk4 / hTERT不死化正常ヒト気管支上皮細胞系HBEC3は、Hamon Centerコレクション(テキサス大学サウスウエスタンメディカルセンター)から入手した。DLL3、GFP、およびルシフェラーゼを発現するSBC5および3T3細胞株は、RediFect Red-FLucレンチウイルス粒子(PerkinElmer)およびDLL3-GFP2

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