臨床薬理の進歩 No.42
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BiotinStreptavidin方  法検討すべき課題の一つとして考えられる。 一方、これらの抗体製剤はバイオ医薬品であり、免疫原性の評価、即ち抗薬物抗体(ADA: anti-drug antibody)の測定は、PKおよび薬効(PD)の個人差を理解する上で重要である。ニボルマブとペムブロリズマブに対するADAは、生存期間やinfusion reactionに対して、臨床的に有意な影響を及ぼさないことが示唆されている4)。しかし、悪性黒色腫患者において、イピリムマブに対するADAの発現群では非発現群と比べて、全生存期間が有意に短いことが報告されている5)。また、治験時における日本人のADA陽性症例のデータが極めて限られていることも踏まえて、実臨床において症例を集積し、日本人におけるPD-1阻害薬に対するADAの正確な発現率およびPK/PDに対する影響についてさらに検証することは、臨床的意義が高いと考えられる。 本研究では、ニボルマブまたはペムブロリズマブが投与されたがん患者を対象に、PK/PDとADAの臨床的関連性を評価することを目的に検討を行った。対象患者および血液検体 旭川医科大学病院において、ニボルマブまたは図1 ニボルマブおよびペムブロリズマブの血中濃度測定系(A)と抗薬物抗体の評価系(B)の概略図HRP, horseradish peroxidase; P, product; S, substrate; TMB, 3,3',5,5'-tetramethylbenzidine.ペムブロリズマブを用いた治療が施行されたがん患者を対象とした。本研究実施計画書は旭川医科大学倫理委員会によって承認され(No. 16056)、全ての患者から文書による同意を取得して研究を実施した。なお、本研究は、「免疫チェックポイント阻害薬の薬物動態および免疫原性と効果・副作用情報の体系的評価と適正使用法確立に関する研究」(CHOPIN試験)の一部として実施し、その情報を大学病院医療情報ネットワークに登録し公開した(UMIN000033036)。 血液検体に関して、治療開始日(ベースライン)と治療期間中、および治療終了後にも血液検査後の残余検体(血漿・血清)を可能な限り長期に回収し、研究用に凍結保存した。薬物血中濃度測定 ニボルマブおよびペムブロリズマブのトラフ濃度は、ヒトPD-1/Fcキメラ組換えタンパク質(100 ng/well)を固相化した96ウェルプレートを用いて、間接ELISAによって定量した(図1A)。検量線は、標準溶液のデータポイントを4-パラメータロジスティック回帰曲線に当てはめ作成し、各時点におけるサンプル中の薬物濃度を算出した。なお、定量下限は0.0125 µg/mLであり、duplicateで測定を実施し平均値を求めた。142HRP-Conjugated Goat Anti-human IgG,F(ab’)2 Fragment SpecificTMBDrugStopHRPLigand(PD-1/Fc)Abs. at450 nmAnti-drug Antibody (ADA)QuantaRedEnhanced ChemifluorescentSubstrateHRPEx. at535 nmEm. at610 nmHRP-Conjugated DrugBiotinylated DrugABPSPSP

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