臨床薬理の進歩 No.42
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方  法ABCG2により体外へ排泄されていることが報告されている4)。 しかしながら、実臨床の日本人患者においてオシメルチニブ未変化体および代謝物(AZ5104、AZ7550)の血中濃度と治療効果および有害反応の発現との相関性、血中濃度とABCB1、ABCG2の遺伝子多型解析との関係性についてPK/PD/薬理遺伝学(PGx)解析による検討はされていない。 本研究では、オシメルチニブで非小細胞肺がんを治療している患者の薬物血中濃度の測定(未変化体および代謝物AZ5104、AZ7550)および遺伝子多型の解析を実施し、薬物の血清中濃度と有害反応の発現との関連性について評価する。また、体内動態に対するABCB1およびABCG2の遺伝子多型の関与について検討する。 対象患者 2018年4月~2020年7月の間に、上尾中央総合病院において非小細胞肺がんと診断され、オシメルチニブを服用開始した成人患者を対象とした。参加に際しては、文書による十分なインフォームド コンセントを行い、同意を取得した。本研究は上尾中央総合病院および慶應義塾大学薬学部の研究倫理委員会の承認を得て実施した。また、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針およびヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針を遵守して実施した。カルテ調査項目 診療録から患者背景(性別、年齢、身長、体重)、既往歴、肺がんの病期分類、ドライバー遺伝子変異パターン、オシメルチニブ、併用薬剤の種類と投与方法、生化学的検査値としてAST、ALT、Scr、BUNおよび血中ビリルビン、血液学的検査値として白血球、血小板、好中球、リンパ球およびヘモグロビン、心電図検査として補正QT間隔、臨床症状としてざ瘡様皮疹、皮膚乾燥、そう痒症、爪囲炎、皮膚色素過剰、爪脱落、毛髪異常、下痢、便秘、呼吸困難および咳嗽を抽出した。CTCAE v4.0に記載されている症状、検査値異常については重症度評価を行った。オシメルチニブ未変化体および代謝物AZ5104、AZ7550の血清中濃度測定 試薬標準物質として、オシメルチニブおよびAZ7550 hydrochlorideはChemscene(Monmouth Junction、NJ、USA)、AZ5104はCayman Chemical(Monmouth Junction、NJ、USA)、[13C, 2H3]-OsimertinibはAlsachim(Rue Tobias Stimmer、Illkirch-Graffenstaden、France)からそれぞれ購入した。オシメルチニブ未変化体および代謝物AZ5104、AZ7550の血清中濃度同時測定法は、既報5)を参照し、当施設のLCMS-8050(島津製作所)を用いて、血清の前処理法は除タンパク法を用いて薬物を抽出後、LC-MS/MS法により確立した。バリデーション試験は、FDAの生体試料分析に関するガイドラインに従い実施した6)。オシメルチニブの体内動態解析 各症例のオシメルチニブ投与全期間(初回投与から定常状態)での測定ポイントにおけるオシメルチニブの血清中濃度を用いて、Phoenix® WinNonlin® software program(Version 6.4; Certara LP、Princeton、NJ、USA)により体内動態を解析した。オシメルチニブの薬物動態は1-コンパートメントモデルにより、吸収速度定数(ka)、分布容積(Vd/F)およびクリアランス(CL/F)を算出した。ABCB1およびABCG2の遺伝子多型解析 DNAは、QIAamp DNA Blood Mini Kit(Qiagen、Hilden、Germany)を用いて、全血から抽出した。ABCB1の1236C>T、3435C>T、2677G>A/TおよびABCG2の421C>A、1143T>C、16702G>Aを遺伝子多型解析項目とし、TaqMan SNP Genotyping Assays(Thermo Fisher Scientific、135

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