臨床薬理の進歩 No.42
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*1 YOKOYAMA YUTA *2 ISHIKAWA EMI *3 KUNIYOSHI OUKI *4 NAKAMURA TOMONORI 慶應義塾大学薬学部 医療薬学・社会連携センター 医療薬学部門、慶應義塾大学大学院 薬学研究科 医療薬学部門横山 雄太*1  石川 恵海*2 国吉 央城*3 中村 智徳*4はじめに要   旨 がんは日本国民の死亡原因第1位であり、中でも肺がんは最も死亡数が多く(令和元年人口動態統計、厚生労働省)、新たな治療戦略の創出が喫緊の課題である。近年、盛んに開発が進む分子標的薬剤のオシメルチニブは、第三世代の上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)である。未治療のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対して、オシメルチニブと第一世代EGFR-TKI(ゲフィチニブおよびエルロチニブ)を比較する第Ⅲ相試験において、無増悪生存期間はオシメルチニブ治療群では18.9ヵ月と、第一世代EGFR-TKI群目的 非小細胞肺がん患者に対する標準治療薬の一つであるEGFR-TKIのオシメルチニブの血清中濃度および遺伝子多型解析と有害反応発現との関連性を明らかにするため、薬物動態学(PK)/薬力学(PD)/薬理遺伝学 (PGx)解析をした。方法 オシメルチニブ投与患者4人を対象に、血清中濃度測定および有害反応の関係性を検討し、薬物輸送担体ABCB1およびABCG2の各遺伝子多型を解析した。結果・考察 各症例の平均の吸収速度定数(ka)は0.6 /h、分布容積(Vd/F)は1525.0 L、クリアランス(CL/F) は16.6 L/hとなり、血清中濃度はABCB1の1236CC-3435CC群で有意に高かった(p < 0.001)。以上より、 オシメルチニブの血清中濃度推移を確認し、血清中濃度の上昇による重度の肝障害の発現、血清中濃度変動に対するABCB1の関与の可能性が考えられた。慶應義塾大学薬学部 医療薬学・社会連携センター 医療薬学部門、慶應義塾大学大学院 薬学研究科 医療薬学部門慶應義塾大学大学院 薬学研究科 医療薬学部門上尾中央総合病院 薬剤部の10.2ヵ月に対して有意に延長し(HR = 0.46、 p < 0.001)、皮膚障害、肝障害の頻度は少ない傾向であった1)。この結果より未治療のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対して、オシメルチニブが標準治療の一つになった。 過去の報告では第Ⅰ/Ⅱ相試験を薬物動態学(PK)/薬力学(PD)解析した結果より、血中濃度(未変化体、代謝物AZ5104)と有害反応の発現が関連することが明確になっている2)。オシメルチニブの活性代謝物であるAZ5104およびAZ7550は、in vitro試験において、野生型EGFRを強く阻害したことが報告されている3)。また、オシメルチニブは薬物排泄トランスポーターであるABCB1およびKey words:非小細胞肺がん、オシメルチニブ、代謝物(AZ5104、AZ7550)、ABCB1トランスポーター、PK/PD/PGx解析Optimizing the clinical use of osimertinib based on PK/PD/PGx in non-small cell lung cancer patients134非小細胞肺がん患者におけるオシメルチニブのPK/PD/PGxに基づく治療最適化

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