臨床薬理の進歩 No.42
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 前処理操作方法 検体をポリプロピレン製マイクロチューブに25 μL分取し、メタノール5 μLを添加した。これらの試料、調製した添加検量線試料及びQC試料に内標準溶液(ブランク試料にはメタノール)20 μLを添加した。全ての試料にアセトニトリル50 μLを添加し、ミキサーにて約30秒間攪拌した。遠心分離(設定4 ℃、10000×g、5分間)し、上清40 μLと水80 μLを混合したものを、LC/MS/MS注入試料とした。測定法検討結果 選択性 ブランク試料を1試料調製し、前処理及び測定を行い、選択性を評価した。 ブランク試料のクロマトグラム上には、Etoposideのピーク検出を妨害するようなピークは認められなかった。また、ブランク試料のクロマトグラム上には、Etoposide-d3のピーク検出を妨害するようなピークは認められなかった。これらの結果より、良好な選択性を示すと判断した。 添加検量線の直線性 添加検量線の全濃度ポイントについて各1試料調製し、前処理及び測定を行った。得られたクロマトグラムよりピーク面積比を算出し、回帰式及び相関係数を求め、直線性及び定量範囲を評価した。 添加検量線は、回帰式y = 0.000879x + 0.000565、相関係数0.9999であった。回帰式から求められた添加検量線試料の各濃度の真度はLLOQで99.9%、その他の濃度で98.6-101.8%であった。得られた結果より、濃度範囲3-10000 ng/mLにて良好な直線性を示すと判断した。 日内再現性(QC試料) 3濃度のQC試料(30、300及び3000 ng/mL)を各3試料調製し、前処理及び測定を行った。添加検量線を用いて定量値を算出し、真度及び精度を求めた。 日内再現性における真度及び精度は、全ての濃度において、96.0-100.4%及び1.3-7.9%であった。得られた結果より、良好な再現性で評価できると判断した。2. 対象患者と試験プロトコル対象患者 症例は既往、家族歴のない初診時2歳女児であった。尿閉、歩行困難を主訴に受診した。脊髄MRIでTh12-L3までに脊柱管内を占拠する硬膜内腫瘍を認めた。頭部MRIで転移を認めなかったが、髄液細胞診で腫瘍浸潤を認めた。腫瘍生検を実施し、病理組織学的検査によりAT/RTと診断した。化学療法はDana Farber Cancer Instituteにより報告8)されているDFCI02-294プロトコルによる治療を行った。治療開始後約2か月で胸髄に新規病変を認め、Medical University of Viennaにより報告4)されているMUV-ATRTレジメンに変更し、チオテパ、カルボプラチン、VP-16による大量化学療法、腰髄腫瘍床、胸髄播種に対して陽子線照射を実施した。なお、このMUV-ATRTレジメンにはVP-16の脳室内投与の併用が規定されているが、我が国の保険診療に配慮して、メトトレキサートの脳室内投与で代用した。初発治療開始から1年後の治療終了直後に、頭蓋内に多発播種再発を認め、全脳照射を実施した。再発時の頭部MRIでは、初発時にメトトレキサートの脳室内投与を実施していたためと考えられる広範囲の白質脳症を認めた。そのため、以後のメトトレキサート脳室内投与は実施を行わず、セレコキシブ、フェノフィブラート、VP-16・シクロホスファミドの交代療法によるMetronomic Chemotherapy9)に加えて、脳室内投与はシタラビンで実施した。再発後3か月で髄膜播種増悪による水頭症を発症した。水頭症治療として中圧式のVPシャントを留置した。倫理審査委員会にて承認を得たのち、説明同意を行い、VP-16の脳室内投与を実施した。髄液細胞診ではVP-16脳室内投与開始から1か月で陰性化し、陰性化が2か月持続し、QOLの維持された期間を過ごすことが可能であっ129129

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