臨床薬理の進歩 No.42
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謝  辞利益相反赤血球中にも多量に含まれていることが知られており、採血時の溶血により赤血球中のα-Synが漏出してしまう可能性があることから14)、上清中α-Syn濃度の高値は、赤血球由来のα-Synを検出している可能性が考えられる。このことから、上清中のα-Syn濃度はDLBの病態形成に伴うα-Syn濃度の変化を正確に反映しない可能性が示唆される。その一方で、DLB患者、AD患者および非認知症高齢者における血漿エクソソーム中α-Syn濃度については、非認知症高齢者と比較してDLB患者において高値を示したが、本研究においては少人数を対象とした検討に留まったため、統計解析による有意差を検出するに至らなかった。今後はさらに対象人数を増やし、本研究で確立した測定方法を用いて、血漿エクソソーム中α-SynがDLBのバイオマーカーとして有用であるか検討する必要がある。本研究で得られた成果により、他の血液検査時と同時に血漿由来エクソソーム中α-Syn濃度を定量測定することによる確定診断が可能となれば、受診の際に煩雑な検査を受ける患者の身体的負担の軽減が可能である。またDLBの治療においては、早期発見と早期治療開始がその後の病態進行の抑制に重要であるため、血漿由来エクソソーム中α-SynがDLBの早期診断・鑑別診断の指標となり、早期介入や診断精度向上に役立つ可能性が考えられる。現在の症例数は少ないため、今後多施設で複数検体を収集し、継続的に測定を行う必要がある。 今後の展開としては、継続的に遺伝子型を解析し、血漿由来エクソソーム中α-Syn濃度を測定すること、また、治療効果および有害事象発現と遺伝子型の関連性を調査し、CYP2D6の遺伝型に基づいたDPZの投与量の個別化を試みるということを計画している。さらに、症状の重症度と血漿由来エクソソーム中α-Syn濃度の相関性をみることによる重症度や進行度の判別指標としての有用性を検討する。 本研究の遂行にあたり、研究助成を賜りました公益財団法人臨床薬理研究振興財団に深く御礼申し上げます。また、本研究にご協力いただきました患者様、研究協力施設の関係者の皆様に深謝いたします。 本研究において、開示すべき利益相反(COI)はありません。115

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