臨床薬理の進歩 No.42
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謝  辞TENの発症率は年100万人あたり1-5人とされており、現在のところ尿中LCN-2は7例のみの解析となるが、他の薬疹型、類縁疾患と比較して上昇しており、かつ低値群が存在しなかった。今後の症例追加が急務であるが、SJS/TENの希少性ゆえ単施設での検討には限界があり、今後は我々の施設も分担となっている文部科学省重症薬疹研究班に依頼し、複数施設での患者エントリーを目指す。前述したように尿中LCN-2濃度測定は急性腎障害の診断目的で保険収載されており、信頼性の高い抗体が存在すること、また開発技術の提携が得られる可能性があり、感度・特異度の担保が取れれば迅速診断キットの作成にスムーズに移行できることが期待される。 これまでSJS/TEN発症初期に末梢血好中球が減少することが指摘されていたが、長らくそのメカニズムは不明であった。我々はSJS/TEN患者の末梢血好中球が強いNETs形成を示すことを見出していたため、SJS/TEN患者の末梢血好中球減少はNETs形成による好中球死によると考えた。実際に多くのSJS/TEN患者で発症初期に末梢血好中球は減少しており、ステロイドによる治療後も約半数の症例で低値を示していた。このことからSJS/TEN発症初期の末梢血好中球減少は、感度は高くないものの1つのSJS/TEN発症指標になると考えた。前述したSJS/TEN迅速診断キットを用いたスクリーニングと共に末梢血好中球数を検討することで、より感度・特異度に優れたスクリーニングが行えると期待する。 本研究から、SJS/TEN患者血清あるいは尿を用いた迅速診断キットを作成することは、SJS/TENの早期診断に有用である可能性が示唆されたため、下記の特許申請を行った。発明等の名称:Stevens-Johnson症候群(SJS)と 中毒性表皮壊死症(TEN)の迅速診断法およびキット出願番号:ST023-18P出願日:2019/01/18 本研究の遂行にあたり、研究助成を賜りました公益財団法人臨床薬理研究振興財団に深く御礼申しあげます。また、本研究にご協力いただいた患者様、研究協力施設の関係者の皆様に深謝いたします。研究協力施設(順不同):新潟大学皮膚科学講座、北海道大学皮膚科学講座、慶應大学皮膚科学講座、京都大学皮膚科学講座、杏林大学皮膚科学講座107

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