臨床薬理の進歩 No.41
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予後は良好である18)。そのFuchs角膜内皮ジストロフィの前房水のプロテオーム解析でplatelet degranulationとcanonical glycolysisが正常眼、水疱性角膜症と比較して亢進していた。次世代シーケンサーを用いたヒトCEnCのトランスクリプトーム解析 ミトコンドリアは細胞内で単なるエネルギー製造をするだけでなく低酸素反応や酸化ストレス、細胞分化や細胞分裂サイクルに関わっている19)が、透過電子顕微鏡で水疱性角膜症のCEnCのミトコンドリアに空胞変性などの大きな変化が生じていた。そこで、我々はこの変化を病的な前房環境に長期に曝露されたことによる二次的変化と考え、これに対するCEnCの細胞応答を次世代シーケンサーのトランスクリプトーム解析で検討した。その結果、40448遺伝子のうち水疱性角膜症のCEnCでは正常眼に比べて、2385遺伝子が有意に発現亢進し、2880遺伝子が 有意に発現低下していた(図3A-B)。有意に変化した遺伝子セットの主成分解析では水疱性角膜症と正常眼で62.9%の相異(PC1: 42.0%, PC2: 11.7%, PC3: 9.2%)が検出された(図3C)。また、これまで特定された遺伝性角膜内皮ジストロフィの6つの原因遺伝子のうち、水疱性角膜症のCEnCでは正常眼と比較してzinc finger E-box-binding homeobox 1(ZEB1)とsolute carrier family 4 member 11(SLC4A11)が有意に発現低下していた(それぞれ3.0倍と3.7倍。それぞれP=6.38×10-5と1.97×10-3)。一方、遺伝性角膜内皮ジストロフィのその他の4遺伝子(collagen type Ⅷalpha 2 chain(COL8A2)、transcription factor 4 (TCF4)、lipoxygenase homology domains 1(LOXHD1)およびATP/GTP binding protein like 1(AGBL1))については有意な変化がなかった。またCEnCは正常ではサイトカイン受容体を発現していないと過去に報告されている19)が、様々なサイトカイン受容体、例えばinterleukin(IL)-2r、IL-4r、IL-17rやinterferon-γ受容体(IFN-γr)、アポトーシスを誘導するprogrammed cell death ligand 虹彩萎縮に伴う前房水の微小環境の病的変化は角膜移植片の早期機能不全につながる(PD-L2)やcluster of differentiation 86(CD86)が有意に発現亢進しており19)、水疱性角膜症では前房水のサイトカイン濃度が上昇する12)だけでなくCEnCがサイトカインへ反応しやすい状態になっていることが示唆された。さらに電子顕微鏡所見と一致して、ミトコンドリア関連遺伝子であるcreatine kinase mitochondrial(CKMT)、ATP synthase(ATPs)、solute carrier(SLCs)遺伝子群が水疱性角膜症のCEnCでは正常眼と比較して有意に発現低下していた(図3D)。水疱性角膜症と正常眼の遺伝子発現の相異をgene ontology(GO)エンリッチメント解析をしたところ、水疱性角膜症で亢進した生物学的経路にextracellular matrix organization、cell adhesion、integrin-mediated pathway、signal transduction、IFNγ-mediated pathway、immune responseおよびinflammatory responseがあることがわかった(図3E)。一方、正常眼と比較して水疱性角膜症で低下したものにcanonical glycolysis、glyconeogenesis、PERK-mediated unfolded protein response、glycolytic process、cellular response to hypoxia、response to ischemia、mitochondrial electron transportおよびoxidation-reduction processがあることがわかった(図3F)。さらに興味深いことにCEnCの細胞老化マーカー20)であるP16INK4aが91.6倍に発現亢進し(P=2.43×10-6)、p27Kip1は4.22倍に発現低下していた(P=1.07×10-7)。さらに細胞老化関連経路のMGM2-E3ユビキチン経路の低下(図3G)や、細胞老化関連遺伝子のsirtuin 1(SIRT1)やnicotinamide phosphoribosyltransferase(NAMPT)の有意な低下(それぞれ4.12倍と3.06倍。それぞれP=1.28×10-6と7.5×10-5)21)と、Nicotinamido Mononudeotide(NMN)トランスポーターとして知られるsolute carrier family 12 member 8(SLC12A8)22)の発現亢進がみられた(2.83倍, P=2.21×10-3)。 水疱性角膜症の前房水でのサイトカイン受容体の発現亢進の影響は、前房水内のサイトカイン濃度に関連するのだろうか? これを検証するため、水疱性角膜症の前房水のサイトカイン濃度を測定73

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