臨床薬理の進歩 No.41
75/216

*1 TOKUSHIGE AKIHIRO 琉球大学大学院 医学研究科 臨床薬理学講座*2 UEDA SHINICHIRO 徳重 明央*1  植田 真一郎*2はじめに要   旨Key words:コルヒチン、第Ⅱ相試験、冠動脈疾患、糖尿病Evaluation of the dose-dependent effect of colchicine on inflammatory response and endothelial function−A randomized, double-blind, placebo-controlled phase Ⅱ trial in type 2 diabetic patients with coronary artery disease and leukocyte activation− 日本人冠動脈疾患(CAD)患者の死亡率は、長い間先進国の中で最も低いと考えられてきた。しかし、2005年より現在まで2型糖尿病合併CAD患者の8,000人が登録されている我々のコホート研究は、最適化された標準治療と比較的積極的な危険因子のコントロールの下でさえ、このような患者の心血管死亡率が考えていたよりも高いことを示した1)。我々が行っているレジストリに基づくコホート研究において、アテローム性動脈硬化症の発症におけるキープレーヤーとしての炎症の役割と、炎症反応亢進と心血管イベントの有意な関連を示唆する実質的な証拠があることから、我々は炎症反応亢進を伴う糖尿病合併CAD患者における心血管 本試験は、痛風患者に古くから用いられているコルヒチンの糖尿病合併冠動脈疾患患者における心血管イベント抑制薬としての開発のための探索的試験として実施される、患者を対象とした臨床試験である。今後予定されているアウトカム(心血管イベント)を評価する医師主導型治験(第Ⅲ相検証的試験)を実施するためには、コルヒチンの用量を設定する必要がある。本試験では白血球活性化の指標となるバイオマーカーや、白血球活性化が影響する動脈硬化の指標の一つである血管内皮機能を用いて、炎症反応の亢進した2型糖尿病合併冠動脈疾患患者に対するコルヒチンの用量反応を調査し、次相でのコルヒチンの推奨用量を推測するためのデータ取得を目的として計画された第Ⅱ相探索的臨床試験である。        同   上イベントを予防する薬物としての規制当局承認取得のために、旧来の抗炎症薬であるコルヒチンの第Ⅲ相試験を計画している。第Ⅲ相試験の適切な試験プロトコルを開発するために、用量設定試験が必要である。なぜなら、我々の薬物動力学試験と薬物動力学/薬力学試験ではコルヒチンが40時間以上の長い半減期で白血球中にとどまり、48時間以上白血球活性化の一貫した阻害を示したからである。安全性に関して、いくつかの心血管イベント試験で頻繁に使用されているコルヒチン0.5 mgは下痢の高い発生率と関連している。下痢に関しては用量依存性が想定されるため、安全性に関する用量設定試験も必要である。そこで、2型糖尿病と白血球活性化を有するCAD患者において、1日0.5 mg、0.25 mgのコルヒチンとプラセボの12週61炎症反応および内皮機能に対するコルヒチンの用量依存性効果の評価−白血球活性化を伴う冠動脈疾患合併2型糖尿病患者を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照第Ⅱ相試験−

元のページ  ../index.html#75

このブックを見る