臨床薬理の進歩 No.41
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の対象(65歳以上の高齢者)においても第1選択として一般的に使用されている。一方で、低用量GEM+nab-PTX併用療法(試験群)に関しては本試験で初めて検討される治療法である。今回、我々は標準用量群と低用量群の有効性が同等であることを期待し、下記の考察により、試験群を設定した。まず、有効性の指標として奏効割合に注目した。MPACT試験では標準用量GEM+nab-PTX併用群と標準用量GEM単独群の奏効割合は、それぞれ23%と7%であった(p<0.001)6)。標準用量GEM単独群に関しては他の臨床試験においても、奏効割合は10%に満たないことが示されている8,9)。従って、標準用量GEM+nab-PTX併用群は標準用量GEM単独群に対して明らかに奏効割合の高い治療法であるが、これはどちらかと言えばnab-PTXの貢献が大きいと示唆される。また、同じく標準用量GEM単独投与に対して全生存期間における優越性を示したGEM+エルロチニブ併用療法の場合、奏効割合は8.6%に止まっており、標準用量GEM単独投与に対して有意差は示されなかった8)。参考までに、11例の化学療法未施行例で切除術が施行された膵癌患者の主要組織をヌードマウス皮下に移植し、GEM単独投与、nab-PTX単独投与、GEM+nab-PTX併用投与の3群に分けて抗腫瘍効果を評価した結果、腫瘍の縮小割合はそれぞれ24%、36%、55%であった10)。基礎的検討ではあるが、nab-PTX単独投与の抗腫瘍効果は、GEM単独投与と比較し、少なくとも同等以上であることが期待される。 次に安全性であるが、標準用量GEM+nab-PTX併用療法を実施する場合、骨髄抑制(特に白血球減少、好中球減少、血小板減少)が高率に発現することが知られている。国内第Ⅰ/Ⅱ相試験では標準用量GEM+nab-PTX併用療法の白血球減少と好中球減少の発現割合はGrade3以上でそれぞれ52.9%と67.6%であった7)。現在、本邦で取得されているnab-PTXの適応は、膵癌以外に、乳癌(3週毎単独投与)、胃癌(3週毎単独投与)、非小細胞肺癌(カルボプラチン(CBDCA)併用、毎週投与)であり、他癌腫におけるnab-PTXの白血球減少の発現割合遠隔転移を有する高齢者膵癌に対する標準用量と低用量ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法のランダム化第Ⅱ相試験はGrade3以上で14.0~31.3%であった。同様に好中球減少は41.1~48.1%であったことから、膵癌では高率に重篤な白血球減少と好中球減少が発現するため、他癌腫以上に注意を要する。また、膵癌では標準用量GEM+nab-PTX併用療法の血小板減少の発現割合は全Gradeで88.2%であった。一方で、他癌腫のnab-PTXにおける血小板減少の発現割合は乳癌、胃癌、非小細胞肺癌で、それぞれ13.1%、16.4%、44.7%であった。このように他癌腫と比較すると、膵癌では血小板減少の発現割合も極端に高く、単独投与法(乳癌・胃癌)ではその発現割合が低いことから、膵癌における血小板減少の発現は、どちらかと言えばGEMの影響が大きいと考察される。本試験の対象は65歳以上の高齢者であり、若年者と比較すると骨髄機能の潜在的な低下が示唆されるため、特に注意が必要である。 そこで我々はGEMの適切な用量を検討するため、MPACT試験から標準用量GEM+nab-PTX併用療法におけるGEMのRDI(Relative Dose Intensity: 相対用量強度)と累積投与量を検討した。その結果、標準用量GEM+nab-PTX併用療法のGEMと標準用量GEM単独群のRDIはそれぞれ75%と85%であった。標準用量GEM+nab-PTX併用療法のGEMは、単独投与の場合と比較して、RDIが10%低下したが、これはGEMの減量割合が増加したことが原因の一つと考えられる(GEMの減量割合は標準用量GEM+nab-PTX併用療法とGEM単独群でそれぞれ47%と33%であった)。一方で、GEMの累積投与量(中央値)は標準用量GEM+nab-PTX併用療法と標準用量GEM単独投与でそれぞれ11,400 mg/m2と9,000 mg/m2であった。このことから、GEM+nab-PTX併用療法のGEMはRDIを下げたとしても、投与期間を延長することにより、累積投与量はGEM単独投与に劣らず、リカバリー可能であると考えられる。 以上より、標準用量群の有効性を落とさず、かつ忍容性の向上を目指すために今回の試験群はnab-PTXの用量は変えずGEMのみ初回からの減量投与(低用量)を検討することにした。GEMは主に4141

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