臨床薬理の進歩 No.41
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*1 MAKIYAMA TAKERU *2 HARITA TAKESHI *3 YAMAMOTO YUTA *4 YOKOI AYAKA *5 TOYODA FUTOSHI *6 OHNO SEIKO *7 KIMURA TAKESHI *8 HORIE MINORU 牧山 武*1 張田 健志*2 山本 雄大*3 横井 文香*4豊田 太*5 大野 聖子*6 木村 剛*7 堀江 稔*8はじめに要   旨Key words:L型Ca2+チャネル、QT延長症候群、致死性不整脈、l-cis-Diltiazem、iPS細胞モデルDevelopment of a new pharmacotherapy for lethal arrhythmia associated with long-QT syndrome using a novel Ca2+ channel suppression mechanism using iPS cell model 遺伝性QT延長症候群(long-QT syndrome: LQT)は、心電図上QT間隔延長と多形性心室頻拍による失神・突然死を特徴とし、頻度は2000人に1人とされ1)、病因として心筋イオンチャネル関連遺伝子異常が報告されている。現在、原因遺伝子は15個報告されており(LQT1-15)2,3)、LQT1,2(カリウムチャネル遺伝子)、LQT3(ナトリウムチャネル遺伝子)の3つで検出される遺伝子異常 遺伝性QT延長症候群(long-QT syndrome: LQT)は、心電図上QT間隔延長と多形性心室頻拍による失神・突然死を特徴とし、有病率が1/2000人と推定される難治性致死性不整脈疾患である。LQTの中で、心臓L型Ca2+チャネル遺伝子(CACNA1C)異常によるLQT8型は、稀な心外症状を伴う予後不良なTimothy症候群として報告されたが、最近のゲノム解析にて、心外症状のないLQT8は、全LQTの数%程度占めると考えられる。LQT8に対する新規治療薬の探索をiPS細胞モデルにて行ったところ、臨床で用いられるd-cis-Diltiazemの立体異性体、l-cis-DiltiazemがピークCa2+電流は抑制せずに、遅延した不活性化過程を有意に促進し、活動電位持続時間の延長を改善することを見出した。また、他のLQT-iPS細胞モデル(カルモジュリン遺伝子異常によるLQT15型)にてもCa2+チャネル不活性化遅延の改善効果を認めた。本研究より、l-cis-Diltiazemは、L型Ca2+チャネルの不活性化遅延を改善する新規メカニズムによる不整脈治療薬になり得ると考えられた。京都大学大学院医学研究科循環器内科学      同   上      同   上      同   上滋賀医科大学生理学第二講座国立循環器センター分子生物学部京都大学大学院医学研究科循環器内科学滋賀医科大学アジア疫学センターの約90%を占める。薬物治療として、β遮断薬の有効性が報告されているが、遺伝子型によって効果は異なり、LQT1-3以外の型に対する効果的な治療薬は全く不明である。突然死のハイリスク症例には植込み型除細動器が適応とされるが、対処療法であること、患者には小児が多く侵襲や植え込み後のトラブルの問題もあり、新規治療薬の開発が望まれている。 LQTの中で、心臓L型カルシウムチャネル遺伝子(CACNA1C)異常によるLQT8は、心臓外の奇形24iPS細胞モデルを用いたQT延長症候群に対する新規Ca2+チャネル抑制メカニズムによる治療法開発

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