臨床薬理の進歩 No.41
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*1 ISHIBASHI KENJI *2 TAGO TETSURO *3 WAGATSUMA KEI *4 SAKATA MUNEYUKI *5 TOYOHARA JUN *6 ISHII KENJI 石橋 賢士*1  多胡 哲郎*2 我妻 慧*3 坂田 宗之*4 豊原 潤*5 石井 賢二*6はじめに要   旨Key words:アデノシンA2A受容体、パーキンソン病、Preladenant、PET、IstradefyllineAdenosine A2A receptors in Parkinson’s disease アデノシン受容体はA1、A2A、A2B、A3の4つのサブタイプに分類される。A1、A2B、A3受容体は脳内に広範に分布する。一方、A2A受容体は線条体を中心に淡蒼球、側坐核、嗅結節に高密度に分布し、A2A受容体の大部分は、線条体のGABA作動性中型有棘神経細胞に発現する。中型有棘神経細胞は黒質緻密部のドパミン神経細胞からドパミンD2受容体を介して入力を受け、淡蒼球外節へGABAを神経伝達物質として出力する。つまり、A2A受容体は大脳 アデノシンA2A受容体拮抗薬であるistradefyllineは、ドパミン製剤の補助薬としてパーキンソン病の運動症状の改善やオフ時間の短縮に有効であるが、そのような臨床効果は患者間で大きく異なる傾向がある。そこで我々は、新規PETリガンドである11C-preladenantを用いてパーキンソン病におけるアデノシンA2A受容体の病態解析を行い、パーキンソン病診療におけるアデノシンA2A受容体拮抗薬の使用方法に明瞭なエビデンスを与えることを研究目的とした。本研究ではその第一歩として、istradefyllineのアデノシンA2A受容体に対する占拠率を測定した。ドパミン製剤内服中の10名のパーキンソン病患者を対象とした。各々のパーキンソン病患者はistradefylline 20 mg または40 mgの内服の前後で11C-preladenant PETを受け、アデノシンA2A受容体発現量の指標としてbinding potentialが算出された。用量-受容体占拠率曲線から、最大受容体占拠率とED50を推定した。パーキンソン病における最大受容体占拠率とED50は、腹側線条体:93.5%と28.6 mg、尾状核:69.5%と10.8 mg、被殻:66.8%と14.8 mgであった。したがって、istradefylline 20 mgまたは40 mgの内服で十分にアデノシンA2A受容体を占拠できることが示された。東京都健康長寿医療センター研究所 神経画像研究チーム          同   上          同   上          同   上          同   上          同   上基底核回路間接路の一翼を担っていると言える。この特徴的な脳内分布から、A2A受容体は精神神経疾患、特にパーキンソン病の運動症状の修飾に関与していると考えられている。 パーキンソン病は、黒質緻密部のドパミン神経細胞の脱落と線条体のドパミン含有量減少を病態の中核とした進行性の神経変性疾患であり、振戦、固縮、寡動、姿勢反射障害を主症状とした運動症状が出現する。そして、線条体を中心としたドパミン神経系の変性とともに、線条体におけるアデノシンA2A受容体の発現量が変化し得ることが報告されて15パーキンソン病におけるアデノシンA2A受容体の病態解析

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