臨床薬理の進歩 No.41
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表2 ベダキリン(BDQ)とアミカシン(AMK)、クロファジミン(CLF)、クラリスロマイシン(CAM)の算出FCI indexと既報との比較考  察Ruth et al. 20199)M. avium(N=9)FIC indexrange (min-max)0.73-20.33-20.62-1M. avium(N=9)average range (min-max)0.61.111.21This studyFIC indexaverage±SD0.53-1.060.625-20.375-20.6±0.361.11±0.491.21±0.4謝  辞ex vivoにおいてはこの2剤の併用による相乗効果が顕著に示される結果となった。 治療に有効な抗菌薬の選択肢の極めて少ないNTM症において、新たな抗菌薬開発ならびに既存薬の再配置、併用療法の再検討は非常に重要な課題であると言える。 本研究において我々は、BDQのin vitroでの併用効果評価をCAM耐性M. avium臨床分離株を使用した系で実施した。我々が実施したBDQに対するin vitro MICの結果は、range FIC index が0.00156〜0.0625であり、Brown-Elliottらの報告とほぼ同様(range FIC index ≦0.008〜0.03)の結果が得られた8)。一方でin vitroチェッカーボードMIC測定によるFIC indexの結果を既報のRuthらのものと比較すると、AMK併用時のFIC indexが異なる結果が得られ、我々の検討では両者では併用効果が高いものであるという結論が導かれた(表2)9)。 また、今回使用したCAM耐性臨床分離株9株の平均値からは相乗効果あるいは拮抗作用を示す組み合わせは見出されなかったが、用いたそれらの菌株の中にはCAMとの併用時に相乗効果を示すものが1株、DOXYとの併用時に相乗効果を示すものが1株、AMKとの併用時に相乗効果を示すものが3株、TZDとの併用時に相乗効果を示すものが1株それぞれ認められ、菌株間でばらつきがあることが示唆された。Combinationaverage1.10.970.82BDQ/AMKBDQ/CLFBDQ/CAM 既報のBDQ併用効果評価はin vitroの試験系で評価されているが、今回我々は初めてマクロファージ分化THP-1細胞を用いたex vivo試験評価系を確立することに成功した。細胞内寄生細菌である抗酸菌をin vitro MICのみで評価することには限界があり、またマウスを使用したin vivoの試験系では抗酸菌の増殖速度の遅さから病変形成までに数ヶ月を要すため、評価に多大な時間が消費される。このことから我々が今回確立したex vivo試験評価系は薬剤の併用効果評価の精度向上と時間短縮に大きく貢献することが期待される。 また、ex vivo試験評価系の結果からは、AMKとCLFがBDQとの併用時に、明確な相乗効果を示すことを明らかにした。このことはこれら2剤とBDQとの併用が、肺MAC症治療に有効なレジメになり得るという可能性を示しただけでなく、1年から数年という長期間の連日服用が求められる肺NTM症治療において、相乗効果の証明によって隔日服用など服用方法の改善にも役立つことが期待できた。 本研究を遂行するにあたり、研究助成を賜わりました公益社団法人臨床薬理研究振興財団に心より御礼申し上げます。 また、CAM耐性臨床分離株をご提供下さいました慶應義塾大学 長谷川直樹教授に深く感謝いたします。6

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