臨床薬理の進歩 No.41
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:GFR:CL)hL(RFGLC6年齢(歳)6543210/,0248おわりに10121416すると仮定すると共に、臓器機能の発達に伴う変化を年齢変化に対する関数として記述するPKモデルを理論的モデルとしています。 私は、この理論に基づき、これまでに報告されている7つの小児・新生児のバンコマイシン母集団PKモデルから導き出されるクリアランス(CL)を一斉に解析し、モデル間の違いを比較しました。また、体重変化およびバンコマイシンの排泄経路である糸球体濾過における発達変化に着目して、各年齢におけるバンコマイシンCL平均値の分布と糸球体濾過速度(GFR)の年齢に伴う推移を比較しました。さらに、同部門の助教である江本先生らが報告しているバンコマイシンPBPKモデルを用いて、新生児・小児のバンコマイシンCLを年齢毎に予測し、母集団PKモデルによる予測値と比較しました。検討の結果、解析対象とした患者集団の年齢範囲内であれば、母集団PKモデルの記述式によらずバンコマイシンCLの分布は一致することが明らかとなりました(図1)。また、母集団PKモデルより算出したバンコマイシンCLとGFRの推移およびPBPKモデルによる予測値は相関していることが示されました。本結果は、患者の特性(年齢や疾患など)を考慮して、母集団PKモデルを使い分ける必要があることを示唆しています。さらに、PBPKモデルとの比較結果より、新生児から小児までの一連の成長過程におけるバンコマイシンCLの変化は、体の成長(大きさ)およびGFR(腎機能)の発達に起因することが明らかとなりました。本研究内容は帰国後も継続して取り組んでおり、小児・新生児におけるバンコマイシン個別化投与の推進に向けて、理論的PKモデルを基本モデルとした小児集団へ臨床活用について検討を進めています。 帰国後は、小児臨床薬理学会や臨床薬理学会にてシンシナティで学んだ内容や研究成果を発表する機会を頂いております。引き続き、留学中に得られた経験や知識をもとに、「ファーマコメトリクスを臨床でどう生かすか」をテーマに研究を続けていきたいと思っております。 この度は、留学の機会を与えて頂き、臨床薬理研究振興財団の皆様に厚く御礼申し上げます。また、多大なるご指導とご支援を頂きました増田智先先生、大橋京一先生(大分大学名誉教授)、Dr. Alexander A Vinksに深く感謝申し上げます。同部門の福田剛史先生をはじめ、シンシナティで活躍されている江本千恵先生、水野知行先生・佳奈先生夫妻には公私共にお世話になり、非常に充実した一年間を過ごすことができました。最後にアメリカでの留学生活を支えてくれた妻と息子に心より感謝します。●シンシナティ小児病院医療センター留学報告167実線シンボル図1  各母集団PKモデルにおけるバンコマイシンCL平均値の分布(シンボル)と糸球体濾過速度(GFR、実線)の年齢に伴う推移各母集団PKモデルに共変量として組み込まれている年齢、体重、腎機能値を用いて、各年齢におけるバンコマイシンCLをモデル毎に算出し、平均値を示した。シンボルは7つの各モデルをあらわす。

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