臨床薬理の進歩 No.41
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はじめに 私は平成28年度臨床薬理研究振興財団・海外留学助成金を頂き、2017年10月から2018年9月までの1年間、米国オハイオ州のシンシナティ小児病院医療センター臨床薬理部門に留学する機会を得ることができました。シンシナティ小児病院医療センターは全米の小児病院第3位にランキングされており、その中でも臨床薬理部門は、PK/PD/PGx解析の中心的役割を担っている部門です。私は、同部門教授のDr. Alexander A Vinks、ならびに准教授の福田剛史先生の指導のもと、小児・新生児のPK/PD解析について勉強させて頂きました。 本邦での治療薬物モニタリング(TDM)は、抗菌薬や免疫抑制薬が中心ですが、同部門では両薬剤に加えて抗がん薬、生物学的製剤、オピオイド製剤など様々な薬剤を対象としたPK/PD/PGxに関する研究が展開されておりました。私は留学期間中に、成長・発達過程を考慮した小児・新生児の薬物動態解析法を習得すると共に、薬物動態に関わる臨床研究の一部に携わることができました。また、同センターの小児医療に携わる医師や薬剤師と情報交換することができたのは、大変貴重な経験となりました。留学の機会を与えて頂き、貴財団に厚く御礼申し上げます。PROFILE2004年 長崎大学薬学部卒業2006年 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科修士課程修了2006年 九州大学病院薬剤部 薬剤師2010年 九州大学大学院薬学府博士後期課程修了山田 孝明YAMADA TAKAAKI九州大学病院薬剤部2017年 シンシナティ小児病院医療センター臨床薬理部門研究員 九州大学病院薬剤部 薬剤師2018年 この場をお借りして、私の留学についてご紹介させて頂きます。オハイオ州シンシナティ(Cincinnati) シンシナティはアメリカ合衆国オハイオ州南西端に位置する都市で、コロンバス、クリーブランドに次ぐ州第3の都市です。ダウンタウンはオハイオ川に面しており、橋を渡るとケンタッキー州です(写真1)。人口は約30万人ですが、シンシナティを中心に、オハイオ・ケンタッキー・インディアナ3州の16郡にまたがる人口200万人以上の大都市圏を形成しています。シンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港(CVG)は、アトランタに次ぐデルタ航空の2番目のハブ空港であり、ケンタッキー州に位置しています。シンシナティ市内には、世界最大のスーパーマーケットチェーンであるクローガー、P&G、メイシーズなど日本でも知られている大手企業が本社を置いています。プロスポーツも盛んで、MLBのレッズ、NFLのベンガルズがシンシナティを本拠地としています。毎年8月には、ATPマスターズ1000のテニス大会(Western & Southern Open)がシンシナティ郊外にて開催されています。163(2017年10月~2018年9月)シンシナティ小児病院医療センター留学報告

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