臨床薬理の進歩 No.41
165/216

1) 2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬エンパグリフロジンのメガリン抑制を介した腎保護効果と、尿中メガリン測定などによるコンパニオン診断の有用性について検討するための臨床試験(Renoprotectionandcompaniondiagnosticsverificationintype2diabetespatientstreatedwithempagliflozin,RECOVERY試験) 本試験は新潟大学倫理審査委員会の承認を受けた(2015-2550)。同意取得時において、20歳以上、80歳未満のHbA1c 6.5%以上の2型糖尿病患者のうち、軽度(60≦eGFR<90 mL/min/1.73 m2)および中等度腎機能障害(30≦eGFR<60 mL/min/1.73 m2)を呈する患者を対象とした。この中で、脱水に対する予防策を十分に講ずることが可能な者、身体の不調により食思不振に至り食事ができない時(シックデイ)に適切に休薬ができる者、本研究への参加にあたり十分な説明を受けたのち、十分な理解の上本人の自由意思による文書同意が得られた者を対象とした。また、SGLT2阻害薬に対して過敏症の既往がある者や、重症ケトーシスや感染症、手術前後の者などは除外した。本検討は探索的研究であり、方  法(およびメガリンリガンド分子)の動態を調べることにより、その腎機能保護作用がメガリン機能に関連したものであるか、さらに尿中メガリンなどの検査がコンパニオン診断として有用であるか、探索的な検討を行うこととした。また、SGLT2阻害薬がメガリンの発現・機能に及ぼす影響についても検討を継続することとした。マウスにSGLT2阻害薬を投与し、免疫組織学的手法を用いてSGLT2が発現する近位尿細管のS1-S2セグメントに一致してメガリンの発現が低下するか、あるいは尿中のメガリンリガンドの排泄がどのように変化するかについて検討を行った。さらにSGLT2阻害薬によるメガリン発現への影響の機序を明らかにするため、培養細胞を用いた実験系で確認を行うことにした。非対照、非盲検で行った。同意を取得し適格性の確認を行い登録されたのちにエンパグリフロジン10 mg 1錠内服を開始(追加)した。試験薬開始時ならびにその後の来院ごとに保険診療内の診察および検査(血液・尿)を行う以外に、残余尿検体を保存し尿中メガリンなどの各種バイオマーカーを測定した。 主要評価項目として、尿中メガリンおよびメガリンリガンド分子(α1-ミクログロブリン、β2-ミクログロブリンなど)濃度と腎機能(eGFR)の変化(変化量・変化率)の関連を評価することになっている。また副次的評価項目として、試験薬投与前後のeGFRの低下率、有害反応(低血糖、尿路感染症、性器感染症など)、重篤な有害反応(重症低血糖、敗血症、脱水症、脳梗塞、虚血性心疾患、ケトアシドーシス、急性腎障害、重症皮疹など)、その他のバイオマーカーの検討、そして自記式食事歴法質問票(self-administered diet history questionnaire, DHQ)を用いた食事調査結果を評価する予定である。2)動物実験 マウスへのSGLT2阻害薬投与実験を行った。12週齢の雄のC57BL/6マウスにダパグリフロジン5 mg/kg/日あるいはエンパグリフロジン10 mg/kg/日を7日間経口投与した。投与開始前ならびに投与7日目に24時間蓄尿を行った。8日目に麻酔下で腎臓を摘出し、免疫組織化学染色により近位尿細管中のメガリン発現の程度を評価した。また腎臓ライセート中のメガリン蛋白をウエスタンブロットで評価した。また腎臓中のメッセンジャーRNA(mRNA)を抽出し、メガリンのmRNAを評価した。実験はn=4で行い、one-way ANOVAで評価した。次にラット不死化近位尿細管細胞(IRPTC)にLipofectamine 3000 Reagent(Thermo Fisher Scientific)を用いてヒトSGLT2遺伝子を導入した。導入後24時間後に20 μMのダパグリフロジンまたはリン酸緩衝液(PBS)を添加し、3時間後に細胞mRNAを精製した。24時間後に細胞ライセートをSGLT2阻害薬による腎保護作用機序と尿中コンパニオン診断法の検討151

元のページ  ../index.html#165

このブックを見る