臨床薬理の進歩 No.41
156/216

Statin therapy (Rosuvastatin/Pitavastatin)MatureBaselineFurin-cleavedPCSK9 LDL-C1 month after statin therapy Furin-cleavedPCSK9 LDL-C図1 研究のデザイン方  法の21%において、低反応症例が存在し、LDL-C値の改善も乏しく、動脈硬化進展が急速であることを報告している10)。しかし、この病態の機序は十分に解明されていない。PCSK9阻害剤に対する低反応性については、詳細な検討が行われておらず、今後検証すべき課題と考える。 生体内のLDL-C代謝は、肝細胞内のコレステロール合成、腸管のコレステロール吸収ならびに血液中からのLDL-Cの除去により行われている。このようなLDL-C代謝において、血液中に存在するたんぱく質PCSK9はLDL-C除去において重要な役割を担っている。さらに、PCSK9は血液中に2つのサブタイプ(mature型ならびにfurin-cleaved型)として存在し、肝細胞から分泌されるfurinやFABP4によりその活性を有する。PCSK9は、肝細胞表面に発現するLDL受容体を分解し、肝細胞内へのLDL-Cの取り込みを阻害させ、LDL-C値上昇に寄与する11)。これらの作用は、コレステロール合成のみを修飾するスタチンに対する低反応性の原因となる可能性が示唆される。 共同研究者の斯波は、血液中のmatureならびにfurin-cleaved PCSK9をそれぞれ定量的に測定可能なELISAを開発し、すでに家族性高コレステロール血症症例や健常人におけるPCSK9値(mature型、furin-cleaved型)を報告している12)。ゆえに、本研究では、スタチンの投与を要する症例において、薬剤使用前後のPCSK9値を測定し、薬剤低反応性との関係を解明することを目的とする。研究対象者 本研究は、国立循環器病研究センター研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:M28-119-4)。 2016年4月より2019年4月までの期間において、スタチン投与歴を有さない冠動脈疾患症例を前向きに登録した。具体的には以下に示す選択基準に合致し除外基準を満たさない80症例を登録した。 選択基準  1)18歳以上  2)スタチン投与の適応を有する症例  3) インフォームドコンセントの内容を十分に理解し判断が可能な症例  4) 研究実施計画書にしたがう意思のある患者である。  5) 同意文書に署名している。 除外基準  1) スタチン以外の脂質介入薬剤をすでに内服している症例  2) 妊娠、出産を予定している症例  3) 他に臨床試験に参加している症例  4) 研究担当医師が、研究参加を不適当であると判断するような重篤な病態の患者方法 スタチン投与前ならびにスタチン投与から1ヶ月Mature142

元のページ  ../index.html#156

このブックを見る