臨床薬理の進歩 No.41
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対象と方法ことを可能にするものと考えられる。 一方、喘息の特徴を有するCOPD患者を特定しても、ステロイドに対する抵抗性を有する場合にはステロイド治療の有効性は限定的となる。そこで、ステロイド抵抗性を評価、予測できるバイオマーカーの構築が重要と考えられる。さらに、そのバイオマーカーが同時に喘息の新規抗体製剤の治療予測マーカーとなれば、COPD患者において新規抗体製剤に有効性が期待できる患者を層別化できるものと考えた。 本研究はCOPD患者における層別化治療の構築を目指し、血中miRNAを用いたACO患者の診断バイオマーカーの構築と、ステロイド抵抗性および抗IL-5受容体抗体(ベンラリズマブ)の効果予測バイオマーカーの構築を目的とした。臨床研究1:ACO患者の診断バイオマーカーの構築対象患者および研究デザイン 対象患者は静岡県立総合病院に通院中の喘息患者およびCOPD患者とした3)。喘息およびCOPDの診断は、各ガイドラインに従った。ACO患者の分類は、過去の報告を参考に我々が作成した診断アルゴリズムに従った2)。なお、本研究内容は静岡県立総合病院倫理委員会の承認を得て実施し、対象患者より書面にて同意を取得した。 本研究は横断的観察研究であり、患者登録時に横断的に採血、血液検査および肺機能検査を実施した。同意を取得した202名の患者より、ACO患者6名および喘息患者6名をランダムに選択しdiscovery cohortとし、同様にACO、喘息 およびCOPD患者、各30名をランダムに選択しreplication cohortとした。Discovery cohortは血漿中に発現しているmiRNAをPCRアレイにて解析し、ACO患者で特徴的な発現を示すmiRNAを探索する目的であり、replication cohortは探索的な解析で見出された候補miRNAを検証する目的で行った。血漿中miRNA発現量測定 血漿は採血直後に遠心分離して得たのちに−80 ℃にて保存した。miRNeasy Serum/Plasma Kit(Qiagen)を用い、保存血漿200 μLよりmiRNAを含むtotal RNAを抽出した。なお、miRNA発現量測定における内在性コントロールとして、C. elegans miR-39(cel-miR-39)miRNA mimic(Qiagen)を血漿に添加し、抽出を行った。total RNAよりmiScript II RT Kit(Qiagen)を用いてcDNA合成を行い、定量的PCR法にてmiRNA発現量を定量した。 Discovery cohortでは、血漿中に発現している84のmiRNAを測定可能なPCRアレイ(Qiagen, MIHS-106Z)を用いmiRNAの定量を行い、ACO、喘息患者間で2倍以上の発現変動が認められたmiRNAをreplication cohortにおいて測定した。各miRNAの特異的プライマーにはmiScript primer assays(Qiagen)を用い、miScript SYBR Green PCR kit(Qiagen)にて定量を行った。血清中タンパク濃度測定 血清中ペリオスチン濃度およびYKL-40濃度はELISA法にて、それぞれElecsys Periostin immuno assay(Roche Professional Diagnostics)およびQuantikine ELISA Kit(R&D systems)を用い測定した。臨床研究2:ステロイド抵抗性およびベンラリズマブの効果予測マーカーの構築対象患者 対象患者は静岡県立総合病院に通院中の重症喘息患者25名、非重症喘息患者127名およびベンラリズマブ投与重症喘息患者16名とした。重症喘息の診断は欧州呼吸器学会/米国胸部学会合同ガイドライン4)に従い、高用量ICSによっても治療コントロールが得られない患者とした。重症喘息患者および非重症喘息患者においては、横断的に採血を行い比重法にて末梢血単核球(PBMC)を得た。134

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