臨床薬理の進歩 No.41
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*1 DOKI KOSUKE *2 SHIRAYAMA YUKI *3 SEKIGUCHI YUKIO *4 AONUMA KAZUTAKA *5 HOMMA MASATO 土岐 浩介*1  白山 祐輝*2 関口 幸夫*3 青沼 和隆*4 本間 真人*5はじめに要   旨Key words:プロパフェノン、薬理遺伝学、治療薬物モニタリング、CYP2D6、SCN5AUse of pharmacogenetic information for therapeutic drug monitoring of propafenone プロパフェノンはVaughan Williams分類クラスⅠc群の抗不整脈薬であり、Naチャネル遮断作用およびβ遮断作用を有する1)。プロパフェノンの血中濃度は個人差が大きいため、治療薬物モニタリング(TDM)が必要であるが、その有効治療域は十分に確立されていない。また、プロパフェノンTDMにおける薬効評価においてピーク値とトラフ値のどちらのモニタリングが適切であるのかは明らかでない2,3)。プロパフェノンは、薬物代謝酵素CYP2D6により主代謝物の5-ヒドロキシ体(5-hydroxy propafenone: 5-OHP)に代謝される1,2)。5-OHPは活性代謝物であり、プロパフェノンと同等のNa Naチャネル遮断作用を有する抗不整脈薬プロパフェノンについて、治療薬物モニタリング(TDM)における 薬理遺伝学的情報の臨床的意義について検討した。プロパフェノンのTDMのための基礎的情報として、薬効評価 にはピーク血中濃度が適しており、活性代謝物5-ヒドロキシプロパフェノンの血中濃度を測定する必要性は 低いことを明らかにした。作用部位の心筋NaチャネルαサブユニットをコードするSCN5A遺伝子のプロモーター領域には6つの連鎖する遺伝子多型が知られており、アジア人に特有なハプロタイプBを有する患者では プロパフェノンの有効率が高かった。また、主代謝酵素CYP2D6の遺伝子多型は血中プロパフェノン濃度に 影響し、酵素活性を欠損する遺伝子を保有している患者でピーク血中濃度が上昇していた。以上より、SCN5AプロモーターハプロタイプおよびCYP2D6遺伝子多型は、それぞれプロパフェノンの抗不整脈作用および血中濃度に影響するTDMにおいて重要な薬理遺伝学的情報であることが確認された。筑波大学医学医療系臨床薬剤学筑波大学大学院人間総合科学研究科臨床薬剤学筑波大学医学医療系循環器内科学      同   上筑波大学医学医療系臨床薬剤学チャネル阻害活性を有するが、薬効評価における血中5-OHP濃度測定の有用性は明らかでない1,2)。このようにプロパフェノンについてはTDMを効果的に実施するための情報が不足しており、医療現場においてTDMを十分に活用できていない現状がある。 抗不整脈薬は長い使用経験からその薬物動態学的特徴が明らかになっているが、抗不整脈作用や薬物動態に影響する薬理遺伝学的要因のような効果的にTDMを実施するための情報について十分に検討されていない4)。クラスⅠ群抗不整脈薬の作用部位である心筋NaチャネルαサブユニットをコードするSCN5A遺伝子のプロモーター領域には6つの連鎖する遺伝子多型(ハプロタイプ)が知られ101プロパフェノンの薬理遺伝学的情報に基づく効果的な治療薬物モニタリング

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