50年のあゆみ
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ン内に説明してもらいました。患者チームの治験への参加の同意が得られても、得られなくても、制限時間がくれば終了して、全体で意見交換を行います。最後に担当講師からのコメントと質疑応答を行って終了します。受講者の感想としては、次のようなことがあげられています。(1) 興味深く参加し、講義だけでは得られない治験に関する専門用語の説明ができるようになるだけでなく、コミュニケーションのポイントを体験的に学ぶことができた。(2)本演習で学んだこととしては、(a) 治験と臨床薬効評価法の基本、(b) よい医療者患者関係を作るのに必要な態度とコミュニケーションの基本となる「話の聴き方と話し方」、(c) 患者・被験者の立場に立ってみて、初めて見えてくるものがあった、などです。治験におけるインフォームド・コンセントの実施される場には、コミュニケーションのエッセンスが詰まっています。したがって、「ロールプレイ法により学ぶ治験のインフォームド・コンセント」の参加体験型演習は、治験とコミュニケーションに関する知識だけでなく、技能と態度を学ぶ良い機会になります。知識は講義で学ぶことができますが、技術と態度の修得は参加体験型演習なくしては無理だと思います。また、「ロールプレイ法により学ぶ治験のインフォームド・コンセント」のような問題解決型の参加体験型学習の課題を工夫すると、受講者が興味をもって積極的に参加し、得られる効果が大きいように感じています。治験に関する理解を深められるだけでなく、平素経験し難い患者の立場を疑似体験することになり、医療者と患者の良き信頼関係のつくり方や、分かりやすい説明のし方のポイントなどを学ぶ機会になります。長年にわたって参加体験型学習法として「ロールプレイ法により学ぶ治験のインフォームド・コンセント」の演習を担当してきた経験から、次のような感想を抱いています。(1)医療者と患者の信頼関係について:治験に限らず、医療の場では、「医療者と患者・被験者の間の信頼関係」が重要になります。良き信頼関係の上に立ってはじめて、治験・治療は成功するものです。治験に被験者として参加してもらうための説明は、信頼関係の上に立ってはじめて理解され、共感が得られて、参加の同意が得られるものです。そのためには、目前の患者が何を求めて来院しているのか? その患者への最善の対処法は何か? を早目に把握する必要があります。医療者サイドからの一方的な説明になっていないか? 医療者として話すだけでなく、患者の話を聴く時間を十分にとりながらの対話になっているか? といった点について、常に配慮できるだけの「心のゆとり」は、良き信頼関係を築く際に重要です。(2)治験の意義と必要性に関する説明について:治験の実施法は世界中で同じ方法がとられていること(なぜプラセボを使用するのか、なぜこのような臨床試験を行うのか)を早い段階で説明したうえで、協力を求める方が、以後の流れがスムーズに進むことが多い。わが国でこの薬が臨床で一日も早く使えるようにするためには、厚生労働省に承認してもらう必要があること、そのための手続きとして治験の段階が必須であること、などを個々の患者の理解度に合わせて、分かりやすい言葉で説明することが重要です。(3)分かりやすい説明法の工夫について:分かりやすい説明のために分かりやすい図を作ると、患者の理解度が高まります。説明の順序と構成も大切です。治験薬の利点ばかりを最初の方で強調してしまうと、後でプラセボの話が出てくると、説明が腰くだけになってしまうという場面をよく見かけます。(4)医学・薬学の専門用語に関する分かりやすい説明について:専門用語を分かりやすく説明する工夫、トレーニングは重要です。例えば、治験、プラセボ、二重盲検法、ランダム化などです。(5)説明のし方の個別化について:患者のすでに有している知識のレベル、理解力、性格などといった個々の特性に応じて、説明のし方にも工夫が必要になります。(6)治験に参加することにより被験者が受けることのできる恩恵について:今後も十分に工夫を重ねていく必要があることを感じます。医療機関内での被験者の効率的な動き方についての工夫、プラセボに当たった際に被験者が受ける可能性のある不利益を最小化するための工夫、などがあげられます。97

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