Ⅰ.臨床薬理学集中講座が開講された頃の時代背景<目次>Ⅰ.臨床薬理学集中講座が開講された頃の時代背景Ⅱ.臨床薬理学集中講座:第1期(1997年~2001年)Ⅲ.臨床薬理学集中講座:第2期(集合開催で行った期間:2016年~2019年)Ⅳ.臨床薬理学集中講座:第2期&第3期(Web開催で行った期間:2021年~2024年、現在継続中)Ⅴ.臨床薬理学の教育&学習:特に参加体験型演習の意義について近年、治療医学における薬物療法の重要性はますます高まっています。臨床薬理学は、薬物療法における薬物の有効性と安全性、ならびにその適正な使い方の科学を確立するための学問領域です。臨床薬理学は、科学としての薬理学と薬学が基礎にありますが、人を対象としていることから倫理的配慮が重要となり、法律や人文・社会科学的な面からの対応も求められる幅の広い学際領域の学問です。わが国では1969年に、現在の日本臨床薬理学会の前身となる臨床薬理学研究会が設立されました。翌かに10題余りでした。人を研究対象にした臨床薬理学的な研究発表は全体の3割以下という時期が、4年間ほど続きました。現在の状況と比較すると、隔世の感があります。当時私は、たまたま九州大学医学部と薬学部で向精神薬の臨床薬理学的研究を始めていた時期と重なったため、第1回研究会から参加する機会に恵まれました。第2回研究会からは毎年発表することができました。臨床薬理学研究会は10年間続いた後、1980年に現在の日本臨床薬理学会に発展的に改組されました。臨床薬理学の目指すものは、誰もが期待するところであるにもかかわらず、1970年代はわが国の立ち遅れが認識されていた時期でもありました。薬害(例えば、SMON(1970年)、クロロキン(1971年)、筋短縮症(1973年)、三種混合ワクチン禍(1975年)など)の問題、有効性や安全性に疑念がもたれる医薬品の存在、わが国でのみ広く使用されている医薬品の存在など、多くの問題が認識されていました。そのため、臨床薬理学の研究を積極的に奨励し、その推進と臨床薬理学者の育成を図るために、当時の第一製薬株式会社より創業60周年を記念して資金提供があり、1975年に設立されたのが臨床薬理研究振興財団です。臨床薬理研究振興財団の第1回(1976年)海外留学等補助金の交付を受けて、新設の浜松医科大学に薬理学教授として赴任された中島光好教授が、私の留学先であるスタンフォード大学医学部臨床薬理学部門とVeterans Administration(VA)Hospitalに海外視察のため訪問して来られたことから、臨床薬理研究振興財団が設立されたことを知りました。私は当財団の設立と同じ年(1975年)に、日本製薬工業1970年に第1回臨床薬理学研究会が東京で開催されましたが、まだ初期の研究会で、発表演題数はわず大分大学 名誉教授中野 重行92集中講座記録集臨床薬理研究振興財団主催「臨床薬理学集中講座」のまとめ
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