50年のあゆみ
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AIが進展する一方で「アート」の部分を人が磨く必要がある臨床試験の付加価値をつけるためにも「臨床薬理」が重要特に小児科領域では臨床薬理の必要性を実感している全国の大学に臨床薬理学講座が整備されることが望まれる講座を持たない大学では、臨床薬理学に関して系統的な講義等は行われていないように思います。 改めて全国の大学に臨床薬理学講座が整備されることを望みます。そのためにはまず、他領域の先生方からも、「臨床薬理の専門家がいて良かった」とご理解いただくことが重要です。〈安藤〉浜松医大の取り組みは素晴らしいので、ぜひ、全国がそうなればよいと思います。森下先生のお話では、看護師の特定行為研修において、臨床薬理学を教える先生が少ないという課題が示されていましたが、われわれとしては、とにかく臨床薬理が重要で、面白いのだと広く伝えていくことが重要です。先ほど小児科の先生方の話をしましたが、ある程度ベテランの内科の先生も、臨床薬理の知識が入ってくると、「目からうろこで、これは重要だ、面白い」と興味を持たれます。臨床薬理の面白さに気づいた先生方に、他学会で臨床薬理の発表をしていただくことも大事だと思います。――今後は臨床薬理の世界でもAIの利活用が進むという話がありました。〈渡邉〉 AIの進展が医療に限らず世界を変えていくだろうと思います。例えば薬を選ぶ判断、提案については、AI は非常に長けてくると思います。それでも目の前の患者さんに、より洗練された治療法を提案できるのは、やはりアートの部分だと思います。ですからアートの部分は、人が磨いていかないといけない領域だろうなと思います。〈安藤〉個人的に思うのは、究極的にはアートの部分もエビデンスを重ねていけば、サイエンスになっていくのだろうと思います。そのためにも、データを出しエビデンスを重ねていかない限り、 AI としては使えません。例えばプラセボ効果が高い人は、それほどの投与量は要らない、あるいはプラセボを投与すべきということも、きちんと臨床研究をしていく必要があると思います。将来的には AI が「この患者さんはプラセボでよい」と判断し中身が入っていない「薬」が出てくるかもしれません。次第にアートの部分は減ってくると思いますが、2050年に、アートの部分でもAIが使えるまでにはなっていないだろうと思います。――今後の創薬における臨床薬理の展開についておてくれることを期待しています。〈安藤〉シニアチームの座談会の中でも、臨床薬理学の専門家はサブスペシャリティを持ち、臨床薬理学を推進することが重要だという話でした。渡邉先生は専門領域をバックアップし、専門領域間をつなぐ役割を担いやすくなるというご意見でしたが、そのとおりだと思います。むしろ自らがプレイヤーとして、いかに臨床薬理が重要で楽しいかを見せていく。そして仲間を増やしていくというイメージで浸透させていくことが重要だと思います。――小児科領域での関心は高いと語られていました。〈安藤〉小児科の先生方は臨床薬理の必要性を実感されているので、その意味でも仲間に入っていただきやすいと思います。小児の場合は僅かな投与量の違いで効き過ぎたり、逆に効かなかったりします。庄司健介先生から「TDMセンター」構想のお話が出ていました。庄司先生が所属されている国立成育医療研究センターのような専門施設では、 TDMなど臨床薬理の実践の場があります。しかし周辺施設では、まだ不十分な状況です。どの施設でも同じようにできるまでは、専門施設が中心になって手助けをしていければよいのではないかというご意見だったと思います。一方、薬物動態を評価する場合、大人では一度投与した後に30分、1時間、2時間、3時間、4時間と何回も血中濃度を測りますが、小児では困難です。そこでワンポイントで採血し、それらをポピュレーション解析により全体として見る方法をとっています。中央のセンターがあれば、臨床データが集まりやすくなり、小児を対象にした臨床研究はより活発になると思います。〈渡邉〉小児の薬物動態の情報は成人と違い、臨床データがとぼしい状況です。全国各地のサンプルを集約し、正確な薬物血中濃度測定を実施した上で、データを還元、または情報共有できるようなTDMセンターが設置されることは重要だと思います。――学部教育や卒後研修など人材育成の充実は、仲間づくりの上でも欠かせません。〈渡邉〉臨床薬理学講座が全国的に十分にあるとは言えませんが、今ある臨床薬理学講座ではそれぞれ充実した学部教育を提供していると思います。一方、89

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