新たに対象年齢の緩和や教育助成とともに一般啓発にも期待AI利活用には臨床薬理領域のデータ集積と学習が不可欠臨床薬理研究振興財団への期待と要望話から25年後、その先に向けては、第一に、臨床薬理学の啓発・普及をしなければいけません。医師、薬剤師だけでなく一般の方々にも知っていただくため、今は、地道に仲間を増やすことが最も重要であるということでした。また、そのことが臨床薬理学研究の進展ともリンクしているということが分かりました。逆に、研究をしっかり発展させれば、おのずと一般の人にも臨床薬理学の重要性が広まり、医師や薬剤師の間にも、臨床薬理学を求める機運も高まり、実際に習得していただけるようになるだろうと思いました。個別化医療に関しては、すでに先生方は実際の取り組みを進めておられ、明るい未来が見えていると思います。AIの発展を含め、25年後には電子カルテに入力すれば自動的に薬と投与量が出てきそうな気もしてきました。あっというに、そういう世の中になるのかもしれません。ただし、それを実現するためのデータがなければ、AIは何もできません。臨床薬理学を専門とするわれわれは、当面はしっかりとデータを蓄積し、25年後には、どんな医師もその成果としてのAIをきちんと使いこなせるようになる、そういう世の中が来たらよいと思います。〈安藤〉最後に臨床薬理研究振興財団への期待をお話しください。〈肥田〉本当に多くの事業を通じて若い先生方の役に立っていると思います。私たちも研究奨励金をいただきましたし、海外留学助成金もご支援いただいています。今後も、継続して若い先生方をご支援いただければと願っています。また、その候補者になるような方を1人でも多く輩出するのが、私たちの仕事かなと思っています。若手育成という意味では、毎年夏に開催される集中講座の果たす役割が大きいと思います。対面やオンラインを含めさまざまな仕組みを柔軟に使い、今後も多くの方が受講できるとよいと思います。〈庄司〉臨床薬理学と研究とは切っても切れない関係にあると思いますし、今日も教育の重要性が指摘されました。やはり集中講座は非常にありがたいと思っています。また、われわれが研究者としてキャリアを積んでいくためには、研究費を継続的に獲得することが必要です。特に財団の研究助成は使途の自由度が高く、必要なことにきちんと使え、たいへんありがたいと思っています。ぜひ今後も継続してどたくさん取られていますが、アカデミアの方にもぜひ情報共有いただければうれしいです。データを蓄積させれば、データベース解析なども可能になると期待しています。また、小児用医薬品については、小児治験ネットワークの果たす役割は非常に大きいと思います。単施設で解決できないことでも、日本全体のネットワークでカバーしながら、新しい薬を創っていこうという流れが、小児以外の領域でも加速していくことが期待されます。〈安藤〉次の25年を考えた場合に、臨床薬理学とAIとの関係性はどうでしょうか。小児の複雑な薬の薬物投与設計もデータを大量に入れることでAIの方が得意になる可能性もありますね。〈肥田〉超高齢化社会では確実に人口減少が進み、AIなどを合理的に使えるハイテク時代になると、臨床薬理学はパーソナライズされたところにどんどん関わっていくしかないのかなと思います。〈庄司〉私の所属している病院では臨床現場にAIを活用しようとの取り組みは始まっています。例えば画像診断にAIを使うようなことが実際に始まってきていますが、今のところ、AIが薬の種類や処方量を決めるといったところまでは至っていません。25年後はあらゆる分野にAIが関与していると思いますが、複雑な計算などは確かにAIが得意だと思いますので、うまく活用していければよいと思います。〈安藤〉今からデータを集積して学習させることで25年後には、良いAIにつながっていくのかもしれませんね。〈福土〉最近見た記事では、AI活用でガイドライン作成にかかる時間が10分の1まで減らせるそうです。今は人の目でエビデンスとなる論文を見返し、エビデンスレベルのランク付けをしていますが、コンピュータに全部データを入れれば一瞬で作業が完了できる可能性もあります。また、AIによる臨床薬理学の研究デザインができるかもしれません。〈肥田〉今年2月の日本臨床試験学会に参加した時、あるソフトウェア会社が開発したAIに研究計画書を読み込ませ勉強させると、研究計画書をAIで書くことができるところまで来ていると伺いました。もう間もなく、プロトコールを書かなくてもよい日が来るのかなと思いました(笑)。近い将来、AIはもっと私たちの身近な存在になり、AIが生成した情報を私たちがどう使うのかという議論になるのだろうと思います。〈安藤〉ここまでをまとめてみますと、皆さんのお84座談会
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