50年のあゆみ
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製薬企業とアカデミアの 研究者との情報共有が重要えてくるはずです。それらがCTDサマリーの中にまとめられていますが、承認後のメーカーの医薬品情報提供では、あまりフィードバックされていません。そこで相互の情報交換が非常に大事です。事前にその薬についてたくさん調べている製薬会社の臨床薬理チームとアカデミアの研究者が情報共有できれば、妥当な濃度や投与量、影響因子などの情報を収集できて、適正使用にもつながると思います。〈安藤〉実際に何か働きかけられたことはありますか。〈福土〉国内の製薬会社は質問をすると比較的回答してくれますが、外資系の企業は情報を一切、オープンにしません。CTDサマリーを見ても黒塗りになっている部分が結構あります。PMDAに聞くと、「これは企業の特許に関わるのでオープンにできない」と、結局知りたいところが見えません。現在、新しい抗体医薬品についてPK/PD、抗薬物抗体の測定をしていますが、こちらからの質問には国内企業は非常に親切に対応してくれている感じです。すべての製薬会社にオープン対応いただければ非常にありがたいと思います。〈庄司〉現場で一から全部やり直すのはたいへんですから、製薬会社が持っているデータと臨床現場で得られたデータを合わせることができれば、新たな目的に対して母集団薬物動態解析を用いて再解析することもできると思うので、連携ができるとよいなと思います。小児の場合はそもそも成人ほど薬の選択肢がなく、私の領域では世界的に耐性菌が大きな問題です。ようやく最近は新しい薬が出てくるようになりましたが、そもそも小児では治験がされずデータもなく、投与量も書いてなくて困ることが多々あります。最初の開発段階で、小児に関してもある程度の研究ができればよいと思います。国内でも小児の医薬品開発について何らかのインセンティブをつけることの必要性について議論が活発になることが望まれます。〈乾〉福土先生のお話に関連し、やはり日本で治験をし、新しい薬を創っていかなければと思いました。個別化治療を進めることと薬剤開発をしっかりと行っていくことと並行して行う必要があると思います。〈肥田〉治験ではファーマコゲノミクスのデータなして、「ベストです」「低すぎるので、このくらいの投与量に増やしてください」というように、電子カルテ上でメッセージが出るそうです。〈安藤〉それが臨床で当たり前になってくると、医師としては、その見方を理解しなくてはなりませんね。〈乾〉個別化治療を含め薬物の評価を行う場合、効果に関しては開発する製薬企業やそれぞれの専門家が一生懸命検討すると思いますが、有害反応に対しては比較的モチベーションが低いように思います。この点は臨床薬理研究者が積極的に対応しなければならないと思います。〈福土〉有害反応が出たとしても治療薬がその薬しかないような場合、何とか最大限に効果を高め、副作用を最小化するという使い方を考えなければなりません。個々の薬で明らかにすることは、大切な研究領域と思います。製薬企業は治験段階で徹底的にデータを取って調べています。採血して血中濃度も、ファーマコゲノミクスやバイオマーカーの情報も、さまざまなデータを持ち合わせていて、有効性・安全性については、Exposure–Responseの解析もして、承認申請に際してCTDサマリーの中に、それらの報告がまとめられています。一方、FDAは企業から新薬の解析データを集めて自ら統計処理、解析をしています。例えば、免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダは2mg/kgで最初承認されましたが、FDA自らが解析して、用量をfixeddoseの200mg/bodyに変更することを後で承認しています。そういうレギュラトリーサイエンスの部分は米国と比べて日本は弱いと思います。製薬会社が持っている豊富なPK/PDデータも、臨床現場にもっとフィードバックしてほしいなと思います。こういった情報を利用し血中濃度を測りながらであれば、うまく治療継続ができる症例もあると思います。そこを臨床薬理学の研究あるいは臨床薬理を専門とするドクターや薬剤師が積極的に先導していくことができればよいなと思います。〈安藤〉製薬企業が作ったデータは不十分なので、その後の実臨床で相互作用を含めた臨床研究が必要というイメージでしたが、データはたくさん持っているということなのですね。〈福土〉例えば特殊集団におけるPK/PDデータ、性差や食事の影響など基礎データをたくさん持っていて、それを使って解析すると、ある程度どの当たりの濃度が一番フィットするのか、安全なのかが見83

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